ゲームのはじまり
第143話 ゲーム《戦争》のハジマリ
俺の知る
大魔王様の崩御により人間界と魔界にあった約定が解かれ、国家間戦争を起こせるようになる。
…という風なモノローグからゲームが始まる。
その事は大魔王様の死後すぐに各国が知ることになり、魔界に隣接するアルスハイル帝国は世界で一番肥沃な土地として、嘗ての戦争で魔族に奪い去られた土地として認識されている『リヒタール領』に攻め込むことになる。
俺のいた、あのリヒタール領だ。
そのアルスハイル帝国の侵攻を強力にバックアップするのがエラキス教国。
人間こそが神の祝福を受けた唯一の種族であり、神との敵対勢力である魔族は須く皆殺しにすべし、というとんでもない教義を持った国家だ。
んでそのエラキス教国の聖騎士団とアルスハイル帝国軍との同時侵攻を向かえ打つリヒタール領の領主は武闘派で熟練の将軍であるリヒタール伯爵…ではなく。急死した伯爵の跡継ぎ、ボンクラと名高いカイト・リヒタールだ。
人間界最強の帝国軍と最狂の聖騎士団、その同時侵攻にカイトは耐えられるはずもなく。
カイト君はあっさりと負け、リヒタール領は占領される。
…んで怒ったアシュレイが大暴れするって話の流れなんだけど。
でもこの世界じゃアシュレイはもう居ない。
コイツの名前もどっかで出てきた気がするんだけど…何せゲームのシナリオは適当に斜め読みするくらいしかしてなかった。おまけにカタカナの名前なんて。
カイトが死ぬところまでは何回かやったからそれなりに覚えてんだけど、もう歴史が違い過ぎて話にならん。
あんまり死にまくるところが強烈だったから1周目のアシュレイ主人公プレイの時なんてほとんど覚えてないのだ。うーむ。まあ、どうせ同じになるわけないからいいか。
悩ましいが今はとりあえずダンジョン…か?軍備を増強するべきなんじゃないか?
兵糧も…いや、食料は余って余ってしょうがないわ。
格安で輸出するくらいあるんだった。
「うーん。取りあえずは相手が攻めてきてからかなあ…リヒタール領はあっさりと取られそうだな。ああ、って事は次は伯母ちゃんとアホ(アフェリス)か。うーむ」
「援軍に赴かれないので?」
「どこかの公爵軍の時とは状況が違うからなあ。知らないところじゃないとはいえ今は他人の土地だし。どこの馬の骨かわからん奴の指揮下に何か入りたくないぞ。」
「ですが、リヒタールの民はどうなさいます?」
「そこなんだよね。こっちに避難したい人たち誘導してくんない?食い物はいっぱいあるし」
チラッと窓の外を見る。
そこにあるのは缶詰工場。ついに缶詰までできるようになってきたのだ。
と言っても初期の初期である。鉄製の缶にふたを溶接したものだ。
加工も俺の目から見ると甘く、カンは分厚くて重い。
でもトマトや肉が腐らずに何か月も保存できる…まさに戦場に持っていくには最高の品だ。重量以外は。缶詰を実装するとなると、輜重隊には出来ればトラックを支給したい。
そのくらい重いからなあ。
とまあ、缶詰以外にもいろいろ保存食は作っている。干し肉やドライフルーツみたいなのも当然あるし、小麦やソバのような穀類の生産も沢山増やした。勿論旬の野菜もいっぱいだ。
牧場の方も段々いい感じになってきたが、コッチはさすがにそれほど急激に増えない。
豚はまあ豚算式に増えているが、牛さんはそれほどでもない。同様に羊も馬もあんまり増えていないのだ。
と言う訳で食料に付いては好き嫌いが無ければかなり潤沢にある。
俺としては早くニワトリをゲットしたい。
無理やり捕まえて飼ってる野鳥は大きさはバッチリだが、卵もあんまり産まないし喧嘩ばっかりするし檻は壊そうとするし…
「アレはモンスターですからなあ」
「温厚で飛び回らなくって肉が美味くて卵いっぱい産む。食べられるために生まれて来たような鳥を早く連れてきて」
「無茶を仰る」
そんな理想的な生き物が世界にいたら…まあ
ニワトリ捜しは忍者部隊に適当に任せる。
それほど優先度の高い事項でも無いし、何かのついででいい。
人間界の方にはありそうなんだけど…マリア達は人間との混血魔族は多いが、純粋な人型かと言えばそうでも無い。なので人間の国に堂々とお邪魔するのは色々とまずいのだ。
特に戦争が始まってしまうと迫害どころか捕まって奴隷、下手すれば嬲り殺しにされる。
そんな危険なところに諜報作業なら兎も角、ニワトリ探してきてとは言えない。
「とは言えリヒタール領の事は心配だな。師匠経由ででも連絡を取ろう」
「カイト様の伯母様になるのですから…アークトゥルス女王様に直接ご連絡されては?」
「それもそうなんだけどなあ」
親父と伯父さんが暗殺されてから、伯母さんがアークトゥルス魔王の座を継ぐことになった。
嫁に来た身なのに…と本人は愚痴っているが、アフェリスが成人するまでの繋ぎという事で仕方なく即位することになったようだ。
大魔王様の葬儀の時に伯母さんに会ったが、見かけは元気そうにしていた。
でまあ、夫である前アークトゥルス魔王の政治方針を引き継いで…と言えば聞こえはいいが、実際にはほとんど何もさせてもらえないらしい。
お飾りの女王様として側近が
この分ならアフェリスの時代になっても危ないもんだ。
「そう思うならカイト様が即位されればよいのでは?」
「どういう理由でそうなるんだよ」
「一応継承権はあるはずですがな…それともアフェリス様を娶りますか?姉妹一緒にというのも悪辣な魔王らしいですな。ワハハ」
「お前そういうジョークいうキャラじゃなかったと思うんだけど」
マークスは最近段々と下ネタが多くなってきている。
何故って俺に女っ気が無いからという理由が大きいようなのだが、そんな事言われてもな。
「とりあえずは師匠経由で手伝えることがあれば行ってもらうようにしよう。言うて俺が手伝えるのは食い物と避難民の受け入れくらいだ」
「兵糧ほど大切なものはありませんぞ。」
まあそういう事にしておこう。
小さなことからコツコツと、かな。
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