第96話 街づくり

「人増えてきたなあ…」

「ですなあ。当初とは大違いですな」


久々に街に視察に出た。

マークスとマリアと、三人で領都のヴェルケーロ村開発計画を話し合った。

やっぱ実際に見てみないとって事で外をウロウロしたのだ。

そうするとただ通り過ぎる時にはあんまり見えなかった部分が多く見えてきた。



まず、まだまだ建設中の建物が多い事。

住居は勿論だが、工場や学校、風呂のような大きな建物と大きい商店に小さい商店と何軒同時進行なのかさっぱり分からん。


次に何作るって具体的な指示は俺はあんまり出してない。

うっすらと工場や学校をこの辺に~って指示したくらいだ。

それもざっくりこの辺この辺、って程度。建物の箱だけこの辺って指定するが、中の構造なんかぜーんぶ大工のゲインに丸投げである。

いいの。あいつは俺の中で一級建築士だからもう設計から何から任せときゃいいの!


昔、リヒタール領にいた頃に木材や鉄材の規格を決めて、そうしてパーツを作ってから組み立てればサクサク進むとか、耐震性を上げるために筋交いすじかいを入れたらいいとかそんな話をゲインとした。

どうやら建設中の建物を見ると、その辺は守ってるみたいだ。

というかそういう作りの建物しか見てない。


この辺りは鉱山もあり、恐らく火山活動やそれに伴う地殻変動が活発だろうと考えられる。

つまり地震が多く、耐震構造は必須になるのだ。


弱い地震はすでに何度か感じたことがあるし、地元住民は慣れっこのようだ。

リヒタール領から移住したメンバーが震度2くらいの地震にビビりまくってたのは見てて楽しかったが、逆に地元住民のように慣れ切って危機感がないのも不味い。

そのうち避難訓練なんかも必要かもなあ。



でもまあ…


「…概ね開発は順調ってところかな。」

「大変素晴らしいですな。行商人や冒険者から宿が足りないとの声が多く上がっておりましたので宿を増設しましたぞ。」

「おう。ちゃんとグレード分けてる?」

「勿論です。部屋、料理共に高級な金鳥亭、中級冒険者向けの銀鳥亭、お値段そこそこの銅鳥亭、素泊まりのみ格安の鉄鳥亭とあります。勿論周囲をロッソ殿たちが周回しておりますので特に問題は今のところありませぬ」


素晴らしいとはこのことだ。

人が増えれば事件も増える。

だが優秀な人材がいれば領主たる俺がなーんにもしなくても未然に防いでくれる。

こういうデキる部下がいればジ〇ンはあと30年は戦えるだろう!つまり有能な部下こそ宝!人は石垣、人は城よ!


「うーむ、やっぱり人材こそ宝だなあ。長生きしろよマークス」

「おおっ!坊ちゃん…」


長生きしろ。長くこき使うから。

あと何年目標までかかるかわかんねーんだから…

そういうつもりで言ったのに、マークスは顔をしかめて後ろを向いた。

どした?


「良かったですね、マークス殿」

「マリア殿…坊ちゃん、いえ当主様!このマークスめは一生当主様について行きますぞ!」

「おう…体に気を使って頑張れよ?」

「なんというありがたいお言葉…!」


ぶるぶると震えるマークス。ああ、これ泣いてるのか…

なーんとなく、便利に使えていい感じだから頑張れよってノリで言ったのにこんなに感動させてしまうとは。領主って恐ろしいな。


「ハハハ…まあ外だし。帰ろう。視察はおおむね順調って事で。」

「ははあっ!」「はい。」


屋敷に帰って昼飯を食いながら3人で感想を言い合う。

結果、開発計画は少しだけ修正するものの、ほぼ予定通り進めることになった。


大通りを設置して、そこに商店街を作る事。

山を切り拓き、住宅街を増やす事。


それから、水源と水道の確保をする事。

鉱山への道も作る事。また、鉱山方面の水源は使わないようにすること…



この辺までは大体決めていた通りの事だ。

修正の内容は、防衛施設について。

魔物避けの柵とあんまり高くない外壁はある。そのうちもっと大きいのを作ろうかと思っていたが、そうすると町はそこまでしか発展しない。


どこぞの巨人に崩される壁のように何層も作ってもいい。そうしようかな。

でもヴェルケーロの町ばかり守ると山の下にある領地はどうなるだろう。

あちらを荒らされると田んぼが。

それは困る。



このスーパーウルトラど田舎のウチの領地にそれほど突っかかってくるものはいないと思っていたが、どうもそうでも無いっぽい。

マリアの情報によると魔族は大魔王様がいるから同族で争おうとは思っていないが、人間サイドはどうも怪しいみたいだ。


3000m級の山を越えないと人間界から魔界には来れない。

だから軍隊でなんて攻めてこないだろ?と思っていたが、トンネルがあることも判明してしまったし、少し考えれば分かるが、この世界はダンジョンで鍛えれば誰でも超人である。

アルプス越えをして攻めてくるくらいの事は十分あり得るのだ。


かつての日本でも冬山を超えて行軍するって事は戦国時代にあったみたいだし…まあ、あの辺の時代の侍たちはこちら異世界でレベルアップしてるチート野郎たちよりよっぽどひどい首狩り族だったからな。

でもまあ山越えには備えておかないと。



…と言う訳でとりあえず両方の街に城壁を作ることになった。

土魔法使いもいれば力持ちの種族もいっぱいいる。みんなで山を削って出た土を運んで壁を作る。

壁の外側には掘を作って水も流す。


そう。いわゆる城壁を作る事になったのだ。

今までは木の柵だけだったのだが…一気に城壁である。

まあ、中々一気に出来る物ではない。

農業の空いてる時間だとかにボチボチと作っていこ。

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