第43話 惜別
前回までのあらすじ
な、なんと!俺付きのメイドで乳母のような存在であるマリアが忍者軍団の頭領の娘だったのだッ!
つまり、メイド忍者…ゴクリ
忍者部隊が来た翌日の夜の事である。
日中、引っ越し作業と業務連絡に追われていた俺はいつもの様に早めに床に就いた。
すぐに眠くなるのだ。という訳で夕飯を食べて体を清めて、ハイお休み~。
「…さま、カイト様」
「んあ?ふえ?」
「カイト様…あなたのマリアが参りましたよ」
「フアッ!?」
おかしなことを言われた気がして飛び起きた。
すぐそばには人の気配が。
だが真っ暗で、何も見えぬ。何も感じぬ。
「…マリア、灯りつけて」
「はい。今すぐ」
マリアが燭台に灯りを付ける。
まるで昨日の焼き回しのようだ。
するとそこには数人の人影が。
なるほど。昨日の今日で仕事が早い。
「ああ、なるほど。夜に尋ねてきた理由は分かった。皆、こちらへ」
小声で話しかけると、皆も小声で返事をする。
でもまだまだ遠い。
俺はベッドから体を起こした状態だが、皆は部屋の隅っこから1mくらいこっちに来た程度なのだ。
「顔を見たい。俺は暗視のスキルなんてモノは無いのだ。もっと傍へ」
「若様の前で遠慮は無用ですよ」
「では…」
一人づつ、近寄って挨拶してくる。
若いのが3人、お年寄りが4人、俺と大差ないのが3人。
こんなにいたのか。4~5人だと思ってた。
「左からウーモチ、トモナ、モエバ、オバワ、コーノヨ、シートオ、トゾオモ、ケッタルコ、ズキノカ、ガーヨウです」
「分かった…皆、よろしく頼む。主に警備と後進の育成、それに情報の保護を頼みたい。しばらくは外の情報は最低限で良い」
「ハッ」
そんなに一気に名前を言われてもさっぱり分からん。
おまけに暗くて顔が良く見えない。後でマリアに聞こう。そうだ、そうしよう。
若いのは男3人、お年寄りは爺ちゃん1に婆ちゃん3、そして俺と大差ない子供組は女ばっかりだ。
メイド見習いにでもさせるのかな?
「…後はマリアを通して連絡すればよいのかな?」
「それが自然な流れになります」
「ならそれでいい。落ち着けば行商も送ってくれと親父の方に頼んでおいてくれ」
「はい…それではこの辺で」
「おう。俺は寝る。また明るいところで会おう。じゃ」
布団をかぶって寝なおす。
結局、いいとこ4~5人だと思っていた忍者部隊は合計10名を超えたことになるわけだ。
それにしても夜寝てるところに忍び込んでくるとは。忍者っぽくていい。素晴らしいな。
夜が明けて翌日。
世話になった者たちや世話をした畑たちに最後のお別れをするときが来た。
年寄りたちはみんな俺が旅立つと言うと涙を流して悲しんだ。
孤児たちにもあった。
ミルゲルたちは何とかついて行きたいと言っていたが、ま~無理だ。
徒歩で3か月近くかかるような長距離だ。
日本で言えば本州横断するくらいの距離があるんじゃないか。
間に海が無い事だけが幸いだ。
とてもじゃないが、孤児たち全員を連れて行くことなんてできない。
でも、だからって年長の奴だけを連れて行くのはもっと厳しい。
なのでミルゲルを始め、年長の者たちは大魔王城やアークトゥルス魔王城で仕官させることにした。
そして、小さい子供たちは彼らについて行って大きめのアパートのようなところを借りて一緒に暮らす。その為に根回しはしてある。
あとは年長の者たちが試験に合格すればよい。
勉強については色々と仕込んであるから問題ない。
身体能力については個人差が凄いから何とも言えない。マークスやロッソが暇な時に武術を教えていて、武官としての就職も出来るかもしれないと言っていたので、まあ文官なら大丈夫だろ。たぶん。
…なんてことを彼らの前で説明したが、付いて行きたいと泣きじゃくる子供たちを宥めるのに疲れた。
夜にはお別れ会をしてみんなで領主館の食堂で雑魚寝した。
まあたまにはこういうのもいいか。
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