第17話 はっきりいって!

「あーもう! 第一王子のロニ様が聖女様にプロポーズするためにルビーをお探しだったんです。私が知っているくらいなのに、知らなかったの?」

「宝石を探していたことは知っていたけれど。リリーの髪色に似あうから」

 確かに似合う。似合うけれども……、これを渡してくれればなんていうか、ルミアが無事王子様と結婚して三角関係になることなくめでたしめでたしってなるのかなと思ってしまったのだ。



 あーもやもやする。

 こういうときは、あれだ。

 遠回りでいくら問いただしてもキリがない!



 私はラリアにちらりを目線をやる。

 大公家で働けるだけあり、視線のやり方でラリアは私の意図を察して他のメイドや従者を引き連れて部屋を後にし、部屋には私とアインの二人だけとなった。



「単刀直入に言うわ。第一王子のプロポーズを阻止してまで私にこの石でできたアクセサリーを送る意図は何? というか……、私を暗殺しようとしたのはあなたなの?」

 ゴクリと息を飲み込み私はアインを見つめた。

「第一王子が聖女にプロポーズするための宝石を探していたことは知っていた。ただ、それがこの宝石だとは思わなかった。君の髪色にとても似合うからと進められて買っただけで他意はなかった。ただ、僕に売りつけた人物は他意があったかもしれない」



 私の質問にアインは、簡潔にそして私を刺激しないようにだろうかゆっくりと答えた。

 確かにアインの言うとおりだ。

 メイドたちが噂するくらいだから、宝石を取り扱う人にとって、第一王子が聖女へのプロポーズのための石を探していることは知らないなんてことは考えられない。

 皇族相手ならば、あまりにもひどい値切り方をされることはないだろうし。

 何よりかにより社交界の中で大きな話題となることが約束された皇族がプロポーズに使った店という泊の恩恵は計り知れない。


 にもかかわらず、宝石はアインに売られた。

 すんなりロニに売り渡さず、なぜそうしたのか……そこにはやはりアインの言うと入り他意があった可能性がある。



「あの暗殺者は、あなたのしわざ……なの?」

 一向にアインは暗殺については触れなかったけれど、私は再び真正面からアインに疑問をぶつけた。

 言葉に出しただけなのに、もしアインが真犯人だったらと手も声も震える。



「誓って、そんなことはない」

「矛盾してるのよ! 私ははっきりいってあなたに愛されるような妻じゃなかった。もう二度と会うことはないと思っていた、とっくの前に離婚したと思ってた。二年も経ってから迎えに来た理由がわからない」

 声は荒げないそう思っていたのに、自然と声が不安をごまかすかのように大きくなった。



「僕は、確かにいい夫ではなかった。君が不安だからあんな行動をしているだなんて考えたこともなくて……。母がこの屋敷で命を奪われたのに、それは母の話で君は関係ないと正直思ってた」

「私たちはあくまで政略結婚で、そこには愛なんかなかったでしょう!」

 ずっとアインのことを好きなふりをしていた。

 正直彼はそう言う風に私がしても、周りが違和感を持たないような人だった。

 


「リリー……」

 傷ついた顔をみて、なんで今更そんな顔をするのよと思ってしまう。

 私自身、好きになりそうって場面は正直何度もあった、どれだけめんどくても、うざくても、彼は取り繕っているとはいえ私の要望を聞きずっと優しかったもの。

 でも、それももうおしまい。



「私たちが結婚をしたのは、バレリア大公家が王家と政治的に対立しないと大公閣下が示したかったから。大公閣下がその役目を退いた今は、前と違って殺される心配がないから大公妃の後釜に座りたい人は国内外にたくさんいるわ」

 私の訴えにアインは首を横に振る。

 もう暗殺未遂事件で私は十分すぎるほどの恐怖を体験した、復讐のつもりならこのあたりでもう終わりにしてほしい。

 婚姻を続ける理由はない。




「……別れたくない」

 すんなり納得してもらえると思っていたのに、答えはまさかのノーで意味がわからなくなる。

「なんでよ……」

 思わず絞り出すようにそう言ってしまう。

 愛芽生えるところなかったじゃない、どう考えてもなかったじゃない?



「それに、君も僕とは別れられない」

「いやいやいや、確かに。確かにアインはいい男よ。同じくらいの人なんかもう出会えないことは私だって馬鹿じゃないからわかってる。だけどね……」

「そうじゃない。命を狙われているのは僕じゃなくて君だった」

「は?」



「最初は僕が狙われているのかと思った。だから部屋を分けて夜は別の部屋に寝てたんだ。だけど、襲撃されたのは僕の部屋ではなく、君だけがいる部屋だった」

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