おまじない【3】

 帰宅後。

 斂は伯父である戒吏かいりに、今日起きた出来事を話した。


「それは厄介な事に巻き込まれたね」

「倭には申し訳ないことをした」

「今度、倭くんを家に連れてきなさい。夕飯をご馳走してあげよう」


 戒吏はそう言うと、経血入りチョコレートについて語りだした。


「食べ物に自身の一部を入れるのは、恋を成就させるためのおまじないだね」

「おまじないって、あの“痛いの痛いの飛んでいけ”みたいなやつか?」

「うん。“おまじない”ってかわいらしい言葉の響きに聞こえるけれど、実際は神仏または神秘的なものの力を借りて、災い病気を起こしたり、それを逃れようとする呪術だよ」


 戒吏はメモとペンを手に取り、“まじない”を漢字で書く。


――まじない。


“おまじない”は、“まじない”に丁寧の“お”をつけた表現だということを、斂は初めて知った。

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