いつもクールな彼女をデレさせたい
でずな
甘えられる立場
私にはクールでかっこいい彼女がいる。
そんな彼女と同居を始め、幸せな毎日を過ごす中。
私はある一つの願望が生まれてきた。
それは……葵がデレる姿を見てみたいということ。
デレデレするのはいつも私の方。……というか、デレさせられるのは私の方。なので付き合ってからというもの、葵がデレてる姿など一度も見たことがない。
自分でも意外な現実にギョッとしつつ、葵デレデレ大作戦の準備を始めた。
準備といっても何をすればいいんだろう?
「う〜む」
洗濯物を干しながら考える。
私がいつもデレちゃうのは、キザなセリフだとかそういうのだけど……。
一番大切なのは空気なのかもしれない。
デレてもいいっていう、甘い空気。
「よし!」
家事の全般が終わったので、早速準備に取り掛かることにした。
今日がたまたま私の仕事が休みで良かった。
もう外は夕焼けが終わりそうな暗さ。早めに終わらせないと、そろそろ葵が帰ってきちゃう。
とりあえず、ここぞというときに使おうと思って隠しておいた嗅ぐとえっちな雰囲気になるアロマを炊いておく。
それでそれで……ソファの上にオシャレにクッションを置いて、ご飯も作っちゃって、映画を見るための簡単なおつまみも作っておいて……。
「ふぅ〜完成」
テーブルの上にすべて準備ができた。
後は葵が帰ってくるのを待つだけ。
「ふぁ……」
ソファに腰を掛けるとあくびが出ちゃった。
まだ帰ってくるまで時間があるはず。
一時間くらい寝てても間に合うよね……。
「ただいまぁ〜」
家の中に入ったら気づいたけど、どうやらもう夜ご飯は出来上がってるっぽい。さっきから食欲がそそる匂いがする。あとそれとは別の、ほんのり甘い香り。
匂いに誘われ、中に入るとやはり料理が並べられていた。
ソファには気持ちよさそうに寝ている結。
部屋の中がきれいになったように見えるので、多分疲れて寝ちゃったんだろう。
「お〜い。結。帰って来たよ」
「ん……おかえりぃ」
起きた結は目をこすりながら、おもむろに立ち上がり、料理を電子レンジに入れ始めた。
ご飯を食べる準備をしてくれている。
それなら、と私は着替えをしにいった。
洗濯物を入れたりし、戻り結と一緒に夜ご飯を食べた。そのすべてはまるで今日が何かの記念日のような、豪華なものだった。
ご飯を食べ、お風呂に入り、あとは寝るだけ。
明日は二人とも休みなので、今日の夜はゆったりできる。
ソファで寛ぎながら映画を見ていると、突然結が私の膝の上に座ってきた。
とろんとした顔で甘えてきたので、両腕で包み込んであげる。
「んへへ」
どうやら今日も姫はご満悦の様子。
追い打ちで頭をいい子いい子してあげると、いつも喜んでくれる。
「え」
撫でようとしたら避けられた。
突然立ち上がり、向き合う形になった。
「え〜と?」
どうしてほしいのかわからず、見つめ合っていると結は両腕を広げ「ん」と合図してきた。
これってもしかして、私が甘えてきてってこと?
わかんない。わかんないんだけど、結のおいで」とでも言いたげな顔を見るとそうとしか思えない。
いつも私は甘えられる側だから、そんないきなり甘えてってなっても……。
「っ!」
うじうじしていたから、結のほうから抱きついてきた。甘えた感じじゃなくて、私のことを優しく包み込むような抱きつき。
こんな、甘えてきてって言わんばかりのことされたら、普段甘えない私でも……。
「うぅ……」
絶対今鏡を見たら、恥ずかしくて顔を真っ赤にした私が映る。恥ずかしいけど、心地よくて。抵抗したい気持ちがあるけど、それ以上に幸せという顔がほころぶ気持ちに満ち溢れている。
「ひゃっ」
耳を触られた。いや、これは触ったんじゃなくて……。
「舐めないでよぉ……」
「んひひ。どう?」
どうって、なんでそんなこと聞くの……。
絶対私のことからかってるじゃん。
「知らない」
「えぇ〜そんなこと言わずに、さ?」
この夜は最終的にやけになり、心の底から甘えた。
起きた時に「にゅへへ〜昨日はすごかったねぇ〜。へへ」と、結に気持ち悪く囁かれたのは絶対忘れられない。
私は甘えると、普段のイメージとかけ離れてしまうから良くないことだと思ってた。
けど思いっきり甘えてみて、私の別の一面を受け入れてくれた結になら、すべてを見てほしいと言う気持ちが強くなった。
付き合っているのに、当たり前のことができていなかった。
これからもっと結と過ごして、ありのまま私を出していこうと思う。
もしすべてをさらけ出して「別れたい」と言われたら、そこまでの人だったと幻滅してしまうかもしれないけど。
いつもクールな彼女をデレさせたい でずな @Dezuna
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