新城圭のこと

放課後。


転校生と一緒に下校する。


別に一緒に帰りたい訳じゃなくて。


転校生という珍しさから私を差し置いて注目を集めた新城圭。


それを利用する手はないと優しくしてあげたら、なんか一緒に帰ることになった。


まぁ一緒に帰るのはいいんだけど…。


「見て見てー!これかわいくなーい?」


「う、うん。」


「ほらほらー!こっちもかわいいでしょー!」


「そ、そうだね。」


なんてスマホで撮った、かわいい私とアクセサリーを見せてるんだけど、さっきから相槌するだけの新城圭。


その反応に少しイライラする私。


だってさー!普通ならもっと大喜びするんだよ!?


それなのにさっきからなにこの反応!


許せないんだけど!?


…ってだめだめ!


せっかくバレてないのに、こんなことでイライラして素の私を出しちゃうなんてだめだぞー!


うんうん!きっとこの子はかわいい私と一緒に帰れて緊張してるんだよね!


わかるー!


もーしょうがないなー!


それなら許してあげちゃう!


…といってもさすがにそろそろかわいくて心の広い私でも疲れてくるし。


「あ、ねぇねぇ!新城さんのお家ってどっちなのー?」


なんて分かれるタイミングを探る。


「え、えっと。わたしはそこを曲がるんだけど。」と二手に分かれる道を指差す新城圭。


内心チャンスと思った私は「えー!そうなんだー!私はあっちなのー!」と新城圭とは反対側を伝える。


そして分かれ道に差し掛かると「それじゃあ新城さん!また明日ねー!」と早速分かれようとしたんだけど…。


「あ…。た、鷹見さん!」と呼び止められる。


「んー?どしたのー?」と内心早く帰りたいんだけど!と思いながら笑顔で近づく。


「あ、あの…。」と自分のカバンを開け、中を漁り出す新城圭。


訳がわからないけど立ち去る訳にもいかず、待ってあげるかわいい私。


「こ、これなんだけど。」と差し出す手には子供が見るようなヒーローのキャラ物の絆創膏があった。


なにこれ。と呆気に取られる私をよそに新城圭は話を進める。


「き、昨日はぶつかっちゃってごめんね。よ、よかったらこれ使って。」と私にその絆創膏を握らせると「ま、また明日。」と走り去ってしまう。


なにが起こっているのか分からず、動けない私の手には絆創膏が握られ。


そして、唯一理解できたことは新城圭が昨日のことが私だと気づいていたことだった。


こうして、再び人生のピンチを迎えた私はいつものかわいい私を作れず帰宅することになった。



部屋へとなんとか戻った私。


どうしたらいいか考え、新城圭を消すのが手っ取り早いのではと思いついた。


でもさすがにまずいよねと、これは最終手段として考えを改める。


それならどうしようかとまた考え出す。


だけど、いい考えが思いつかなかった私は取り敢えず新城圭を監視することにした。


いざとなったら最終手段を使えばいいしね!


というわけで翌日から監視を始めた。


一日目


相変わらず転校生という珍しさで注目を集めて新城圭の周りに人が集まっている。


私の素を話す気配はない。


二日目


少し人数は減ったけどやっぱり新城圭の周りに人が集まる。


周りに言いふらす気配はない。


三日目


かなり減ったけどまだ数人が集まる。


変わらず話す気配はない。


四日目


ついにだれも新城圭の周りに人が集まらなくなる。


なので言いふらす相手すらいない。


そして、この四日間でどうでいいことだけど新城圭についてわかったのは、私と一緒に帰った時に思ったことだけど。


緊張してるのか知らないけど口下手すぎること。


これなら問題なさそう。


まぁ席が隣だから一切関わることは難しいけど、またピンチになるのも嫌なので距離を取ることにした。


というわけでまたしてもピンチを無事乗り越えた私は内心小躍りしながら喜んでいた。


さーて!問題も解決したことだし!これからもみんなにかわいい私を見せて幸せになってもらわなきゃ!


なんて考えているとクラスの子が私の元へとやってくる。


かわいい私に会いに来てくれたのかな?なんて思っていたんだけど。


それは違ったようで。


その子の話によると私を呼んでいる人がいるらしく、せっかく喜んでいたのも束の間。


内心イライラしながらも笑顔でお礼を伝えると話の内容の場所へと向かうことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る