猫かぶりっ子とイケメン女子

たるたるたーる

プロローグ

むかつくむかつくむかつく。


ほんとおおおおおおおにむかつく。


私こと鷹見莉由〈たかみ りゆ〉は絶賛ストレスが溜まりに溜まっていた。


その理由は一個上の先輩が原因だ。


何度も何度も呼び出しては嫌味を言いやがって。


いい加減飽きないのかね。


あーほんとむかつく。


はあああああああああああああ。


私はその場で大きくため息を吐くと家へと向かう。


こんな気分だと顔を上げる気も起きなくて。


だからまさか前から人が近づいて来ているなんて思わなくて。


気づいたのはぶつかって倒れ込んだ後だった。


「いったー!は?なに?あんた!どこ見て歩いてんのよ!」


前を見て歩かなかった私に原因があるのだけど、今の私は機嫌が悪くて。


だから相手に八つ当たりをするしかなかった。


すると身長の高い女の子?が声をかけてくる。


「ご、ごめんなさい!だ、大丈夫ですか!?」


そう言うとぶつかった相手が私を立ち上がらせようと手を差し伸べる。


だけど私はその手を叩き、自力で立ち上がると「大丈夫じゃないわよ!ちゃんと前見て歩きなさいよね!」


そう言い放つとその場を後にした。


…。


……。


………違うよ?


本当の私はこんな性格の悪い子じゃないんだからね?


うん!本当の私は自他共に認めるかわいい女の子で!


みんなから好かれる人気者!


…本当だからね?


さっきのはちょっと。


ほんのちょーっと機嫌が悪かっただけ!


たまに我慢出来なくて、あーなっちゃうだけなのー!


だーかーらー!今の私が本当の私!


その証拠に寝て忘れた次の日の私を見ててほしいなー!


というわけで次の日ー!


いつも通り私は鏡の前で時間をかけて、かわいい私をもーっとかわいく仕上げちゃうの!


うん!今日もかわいい!


お母さんも大絶賛で、私は超ご機嫌!


登校中もみんな私のこと今日もかわいいね!って褒めてくれて!


さらにご機嫌な私は笑顔になっちゃうの!


するとみんなもそんな私を見て嬉しそうにしてくれて!


朝から幸せを振り撒いちゃう私!


クラスに着いても人気者の私の周りにはファンの子達でいっぱい!


ホームルーム開始までみんな離れてくれないんだー!


ね?


これで信じてもらえたかな?


さてさてそれじゃあ今日も楽しい学校生活を送ろー!


というわけでー!


まずはホームルームから!


いつも通り担任の先生が話をして終わりー!


…のはずだったんだけど。


今日はいつもとは違っていた。


「今日はこのクラスに転校生がやってきました!みんな仲良くしてあげてね!それじゃあ新城圭〈しんじょう けい〉さん入ってきてー!」


一斉にクラスの視線がトビラへと向かう。


すると転校生が入ってきて。


姿が見えた瞬間、驚きのあまり「は…?」といつものかわいい私を忘れ素に戻ってしまう。


そんな私にみんながどうしたの…?といつもと違う私を心配そうにする。


「は…拍手しよー!みんなー!」と苦し紛れに誤魔化すとなんとかなったのか一斉に拍手しだしてなんとか事なきを得た私は内心焦っていた。


正直言うと最初の方の私が素の私で。


いつもの人気者の私は猫かぶりとぶりっ子。


みんなには隠していること。


だってそうしないとせっかくかわいい私が勿体無いじゃない?


どうせならチヤホヤされたいもん。


…って今はそれどころじゃないんだった。


私が一瞬素に戻ってしまった原因。


そう。


この転校生。


昨日私にぶつかってきた奴じゃん!


まずいまずい。


本当にまずい。


まさかこの時期に転校生が来るとは思っていなかった私。


昨日顔を見て知らない相手だったから不機嫌もあって素のままだったのに。


まさか転校生だったなんて。


どうしよおおおおおおおお。


そんなことを考えていると転校生の自己紹介が始まる。


「え、えっと。き、今日からこの学校に転校してきました新城圭と言います。よ、よろしくお願いします。」そう言い頭を下げると再び拍手が起こる。


どうしたらいいか悩んだ私は関わらない方向でいくことを決めた。


それに、もしかしたら向こうは昨日のが私だと気づいてないかもしれないし。


うん。なるべく関わらないでいこう。


そう決めた私は少し落ち着きを取り戻していた。


転校生の自己紹介が終わると先生が席を決める。


「それじゃあ、新城さんの席はー。鷹見さんの横で!仲良くしてあげてね!」


はい。無理でしたあああああああああああああ。


こうして私の幸せな日々は終わりを告げるのであった。


…。


……。


私の隣の席へとやってきた新城圭。


「よ、よろしくね。」と挨拶をしてくる。


私も「うん!よろしくねー!なにか困ったこととかあったら何でも頼ってねー!」とせめて最後までかわいい私を演じることにした。


「う、うん。ありがと。」と新城圭がお礼を言うとそこで会話が終わる。


…あれ?


もしかして昨日のが私だって気づいていない?


なにも言わないってことはそうだよね!?


よかったああああああああああああ。


おかえりなさい!私の幸せな日々!


こうして転校生である新城圭との出会いによって終わりかけた私の人生は、なんとか一命を取り留め、またいつも通りの生活を過ごしていくのであった。


つづく。











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