【友達思いの殺人者】
【友達思いの殺人者】①
「そうだ。お前が言っていた新しい助手だが。調べてきたぞ」
拝島の美術館を出た時。ふと、黒瀧が切り出した。そして、脇に挟んでいたファイルを開く。
「昔、とある中学校で起きた
開いたページを九十九に見せる。綴じられているのは、少し古びた新聞記事だ。九十九はそれを受け取り、遮光眼鏡を持ち上げ、目を近づけて文を読んでいく。
新聞記事の日付は四年前になっている。どこかの学校が映っており、『いじめ』や『階段から落ちて死亡』という文章が目立つ。貼り付けられた可愛らしい女の子の顔写真の下には、『亡くなった新谷加代子ちゃん』と書かれている。
新聞記事の文章を呼んでいる九十九に、黒瀧が説明する。
「事故で死亡した生徒の名前は
お前から、調査してくれという奴の名前を聞いた時は俺も忘れかけていたが、この事件は俺も覚えがある。俺は当時、
この出来事は、『探偵』もまだ警視庁に来る前に起きた事故だな。当時はそこそこ騒がれたらしい」
黒瀧は説明を続けていく。
「死亡した新谷加代子には、同じクラスで仲のいい女子生徒がいたらしい。その生徒の名前は
その事件後、芹沢は
黒瀧は別の紙を九十九に見せる。
その紙には『養護施設 かざみどりの
「事件の
「妙な?」
「ああ。
証言によると、階段の上で新谷加代子はいじめの首謀者三人に囲まれていた。何かを話していたようだが、
さらに黒瀧は、最後にこう付け加えた。
「中学卒業を期に、芹沢は
黒瀧が言い終わると同時、九十九のスマートフォンから着信音が鳴った。
「なに?」
九十九は相手の名前を確認しないまま電話に出る。
『お疲れ様です九十九さん』
声は九十九探偵事務所一階で東雲の助手をしている結城だった。
『ええと、今どちらにいらっしゃいますかね。ちょっと三階でトラブルっていうか……いや、いつものことって言えばいつものことなんですけど……』
「三階は誰もいないはずでしょ。長い話はいらないから、分かってることだけ言って」
『じゃあえーっと……そうですね』
電話口の結城はそう挟み、言った。
『多分、イズネちゃんが一人殺しました。三階に死体が転がってます。部屋の中は散らかってるし、なんていうかすごい
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