床上のパラサイト

itsukaichika

ルーティーン

 それは、木漏れ日もギラギラするような真夏の話


 

 大きな樹木の前にスクールバスが止まると、中から大量の生徒たちが飛び出す。ちょうど、巣を壊されたアリの大群のように。そんな巣から出てきた最後の一匹が、僕。帰宅部高校生活二年目、身長167cm、漫画の知識は上の上、ルックスは中の中、クラスカーストは下の下、つまりは何の特技もないただのモブ男である。

 

 え、そう悲観的になるなって?馬鹿言え。

 教室にぎりぎりに入る→誰ともしゃべらずに席へ直行→寝るふりをする態勢→「凡 仁ぼん まさし」と出席を取られるまで待つ

 こんななんの面白味もないルーティーンを続けていれば、「所詮はファンタジーは幻想のまま」という格言さえ思いつく。


 授業が終わると、家には直行せず市の総合病院へ行く。なぜかというと、足をねんざしているからである。これは最近できたルーティーンである。

 

 「ありがとうございました」

 気弱な声でそう言い、今日の診察を終えた部屋を出、そのままいつも通り出入り口から病院の外へと続く中庭へ出る。薄暗い廊下から一転、外は太陽の日差しが容赦なく周りに降り注いでいた。できないとわかっていながらも、それを手ではねのけるようにして、僕は正門への道を歩いていった。横の花壇に目をやると、きれいな紫色の花が咲いていた。名札には、リナリアと書いてあった。

 もう少し近くで見ようと顔を近づけたその時だった。

 リナリアを叩き潰すかのように、上から何かが勢いよく花壇に落ちてきた。あまりに急だったので思わず後ろによろけるも、すかさず目を凝らす。ザクロだった。それを認識したと同時に、上から小鳥のさえずりのような声が聞こえてきた。

 

「ごめんなさい。それ、とってきてくれるかい?」

 どうやら二階の病室からのようだった。

 「しょうがないな..」

 ボソッとつぶやきながら、葉に隠れたザクロを手に取り、進行方向を反転させた。


「あー


 もう一度中に入り、階段を上って二階に行き、人がいるとは思えないほど静かな廊下の中から、さっきザクロが落とされたであろう場所にある部屋を見つけ、すでに全開のドアをノックする。すると、その部屋の奥のベッドからまた、あの小鳥のさえずりが聞こえる。

「わざわざ悪かったね。ありがとう」

 さえずりの主は、僕と同じくらいの年齢の、長髪のとてもとてもきれいな女性だった。


 「これはお礼だ。」

 そう言って12粒のうち、6粒をくれたきれいな女の人、榴美るみと仲良くなるのに、スクールカースト底辺の僕でもそう苦労しなかった。


 その日から、僕の毎日のルーティーンの一部は、僕の大切な時間へと変わっていった。彼女の優しくて、けど凛々しいその目は、毎日僕が病室に寄った時に、最初に彼女が見せてくれる僕の大好きなものだった。

 

 はっきり言おう。これは一目惚れだ。

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