第43話 CTV(イタリア義勇軍団)

-地中海:ジブラレタル付近-

1936年7月20日


 スペインに派遣された艦隊司令官の※①イアキーノ提督は反乱軍を乗せた輸送船団を空軍と共同で護衛していた。


「失礼します。提督、前方距離22000に艦影を確認しました。多数の大型艦が確認されているので、恐らく英国の※②H部隊が我々を監視しに来たのでしょう」


「そうか、既に通過する事を報告しているし問題はないだろう」


「はい、巡洋艦を主力とする艦隊が戦艦を主力とする艦隊に監視されるのは肝が冷えますね」


「ふっそうだな。この艦隊で戦艦を含む艦隊に艦隊決戦を挑むのは絶望的だからな...来年再就役する※③コンテ・ディ・カブール級や改装予定の※④カイオ・ドゥイリオ級がいたとしても勝負にならんだろう。ただ、新型戦艦ヴィットリオ・ヴェネト級が就役すれば話は別だけどな」


「えぇ、就役すれば英仏海軍と多少は渡り合えるでしょうしね」


「あぁ、そして何より空母が建造できる様になったからほぼ互角に渡り合えるだろう」


「しかし、バルボ国防大臣が空母の建造を認めて下さったことは意外でしたけどね」


「そうだなぁ、あの空軍バカのせいで、どれだけ海軍が軍縮条約で保有を認められていると訴えても空母の建造を認めず、空軍から供与された航空機も旧式でどれだけ海軍航空隊が不便な思いをしたことか...」


「えぇ、それを変えてくれたドゥーチェには感謝しかないですね」


「そうだな、海軍が長年欲していた空母を建造する事を認めて下さったドゥーチェが我々をスペインに送り出したんだ、その期待に応えなければならない」


「えぇ、エチオピアでは陸空軍が活躍して、海軍に出番はなかったですが、今回は海軍が活躍する時です。現にスペイン海軍は7割が人民戦線政府に所属しているそうです。それらを撃滅すれば、ドゥーチェからの期待に応えられるでしょう」


「あぁ、イタリアが偉大なるローマ帝国の後継者であり、地中海の覇者である事を世界に示してやろう」


 そう言ったイアキーノ提督の目には燃え盛る闘志が宿っていた。彼が後にスペイン海軍から地中海の悪魔と恐れられるのはまだ先の話である。


-英領:ジブラルタル上空-

1936年7月20日


 英領のジブラルタル海峡の英国海軍基地上空にイタリア空軍の先遣隊が通過した。しかし、かなり遅く飛行していたがそれはある密命を帯びていたからであった。


「おい、そろそろジブラルタルだ。準備しろ」


「はい!」


 と彼の部下がカメラを構える。そのカメラの先には英国海軍基地が映し出されていた。そして各機が決められた区画を数枚の写真にそれぞれ収めた。


 この写真が第二次世界大戦でジブラルタルを攻略するのに使われたのは公然の事実である。



-スペイン:反乱軍司令部-

1936年8月15日


 スペイン南部の都市セビリアには立て篭もる反乱軍と攻略しようとする人民戦線政府軍・民兵が激突していた。


 反乱軍と人民戦線政府軍・民兵が市街戦を展開するなか、反乱軍に味方する新たな軍団が加わった。その名は※⑤CTV。イタリアからの遠征軍である。


「こんにちは※⑥ロアッタ将軍。イタリアから来て頂きありがとうございます。ようこそスペインへ」


「こんにちはフランコ将軍。反乱軍の女神を拝むことが出来てとても私は運がいい様です」


「ありがとうございます。早速ですが、司令部での作戦会議に参加してもらっても大丈夫ですか?」


「えぇ、勿論です」


 反乱軍司令部では机に広げられたスペイン本土が描かれた地図を囲う様に反乱軍将校とイタリア軍将校が集まっていた。


 まず、フランコが内戦の進捗状況をイタリア軍将校に説明する。


「そちらは既にご存知かと思いますが、現在南部に展開する我々国民戦線反乱軍主力は軍を2手に分け、北部のモラ准将が率いる国民戦線反乱軍との合流を目指す軍と包囲されたアルカサル・セビリア・グラナダ・コルドバを解放する軍に分かれて東部に進軍中です。北部の国民戦線反乱軍も2手に分けて、孤立している人民戦線政府側の※⑦バスク地方と我々と合流する為に南進していますね」

 

「なるほど...それで我々は何処を担当すればいいでしょう」


「えぇ、CTVには東進して包囲されているグラナダを解放して欲しいと思っています」


「わかりました。フランコ将軍の期待に応える様に頑張ります」


 フランコ将軍可愛いなぁ...内戦が終わったら、是非ドゥーチェに合わせて2人が一緒にいる所を写真で撮って家宝にしたい.......その為にコミュニスト人民戦線政府をさっさと片付けないとな...


 彼は生粋のムッソリーニのファンだった。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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補足説明(ウィキペディア参考)


①イアキーノ提督

名前はアンジェロ・イアキーノ。艦隊司令長官カンピオーニ提督の後任として、1940年12月8日から1943年4月5日までイタリア王立海軍を率いて連合国軍と戦った。


②H部隊

1940年6月上旬にイタリアの参戦により、地中海艦隊から分離して編成された。地中海西側を担当していた。本作では二重帝国の再建やスペイン内戦に対してのキリスト教の介入等による地中海情勢悪化に伴い史実より早く編成された。


③コンテ・ディ・カブール級

第一次世界大戦中に竣工した弩級戦艦。3番艦レオナルド・ダ・ヴィンチは1916年8月2日爆発事故を起こし1923年に解体された。仮想敵のフランス海軍がダンケルク級の計画が発表された時、フランスの新型戦艦に対抗する為、既存の練習戦艦であった1・2番艦に新技術を投入して近代戦艦に作り替える決定を下した。1933年10月から1937年の間大規模改装工事によって、魔改造と称される程本艦を大幅に戦力強化した。


④カイオ・ドゥイリオ級

第一次世界大戦中に竣工した3番目の弩級戦艦。前級コンテ・ディ・カブール級の設計を踏襲しつつ、不具合を改善した。フランス海軍戦艦戦力の増強に伴いヴィットリオ・ヴェネト級の新技術と先に改装されたコンテ・ディ・カブール級を踏襲した1937年4月から大改装を始めて1940年に再就役した。コンテ・ディ・カブール級を上回る魔改造を受けている。


⑤CTV

意味はイタリア義勇軍団。スペイン内戦でイタリアがフランコの要請によって派遣した義勇軍。史実での規模は約5万と航空機758機。


⑥ロアッタ将軍

名前はマリオ・ロアッタ。史実でもスペイン内戦でCTVを率いて参戦した。第二次世界大戦のユーゴスラビア侵攻ではイタリア第二軍を率いてスロベニア人の弾圧を主導した。


⑦バスク地方

独自にバスク語という言語で話していて独立心が強い。工業地帯が広がり鉄鋼と石炭の産地でありバスク料理が有名。史実では共和国側にビスカヤ県とギプスコア県が立ったがアラバ県とナバーラ県は反乱軍に味方した。

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