第14話 再建 オーストリア=ハンガリー二重帝国

-イタリア:トレント-

1935年1月31日


 私は政府専用機でイタリア北部にあるトレントに視察に来ていた。勿論、史実にあった事ではなく、私が山岳師団を視察したいと言ったのが原因ではあるけど...まさか全山岳師団が「是非、我が山岳師団に視察を!」と言って来るとは思わなかった。


 流石に全ての山岳師団基地を回る時間は無いので、出来るだけ全ての山岳師団を見る為、山岳師団の中から選ばれた部隊をトレントで軍事パレードさせる事になったのだけど、山岳師団内部で熾烈な争いがあったそうな…


 そこには各地方から集められた山岳師団の一個大隊がトレントの町をまるで、戦勝パレードの様に凱旋していた。小さな町での軍事パレードではあったものの、イタリア各地から多くの人々が集まり、数年分の経済効果があったらしい。そこで私が視察したかった部隊が目の前を通り、パレードが終わった後にアンナに確認してから会いに(勿論全部隊会う)行くことになった。


「アンナ、4番目に通り過ぎた部隊は、何処の部隊?」


「はい、あれは山岳スキー大隊※①『モンテ・チェルビーノ』ですね」


「ありがとう。ちょっと長く話すかもしれないから、最後に会う様にして貰えないかな」


「わかりました」


 山岳師団の選ばれた部隊の大隊長に話し合った後、最後の山岳スキー大隊『モンテ・チェルビーノ』に回ってきた。


「あなた達は今回は来年度に予定されている作戦では本土に残るのだけど、ごめんね...」


「いいえ、我々は雪がなければ役にたちません。なんとも思っていないですよ」


「そう、あなた達の実戦は四年後ぐらいかな、それまでにあなた達の部隊に配備したい物があって、一応設計図だけ見て欲しいのだけど良いかな?」


「えぇ、大丈夫ですよ」


 私は書いてきた※②アエロサンの設計図を大隊長に渡す。


「プロペラ推進で進むのですか…面白いものですね。重火器や負傷者の輸送にも使えそうです」


「おそらく北欧諸国との共同開発にはなるけど、貴方から見て大丈夫そう?」


「間違いなく使えるかと、もし出来ましたら直ぐに配備してもらいたいぐらいですね」


「そうわかった。感想ありがとう」


 その時にアンナがやって来て耳打ちした。


「ドゥーチェ、オーストリアとハンガリーで大きな動きがあったそうなので、直ぐにローマに戻って下さい」


「わかった」


「ごめんね。用事が出来ちゃって、ローマに戻らないと行けないから」


「大丈夫です。ドゥーチェはこの国の率いているのですから、ご自分の仕事に専念してください」


「ありがとう。アンナ、待たせてごめんね」


「大丈夫ですよ」


 その後、政府専用機でローマに戻った後、直ぐに首相官邸に向かった。そこには既に大臣達が集まっていた。


「オーストリアとハンガリーで動きがあったそうだけど何があったの?」


 それにチャーノ外務大臣が答えた。


「はい、本日の12時頃、突如として両国で合併に関する投票を2月5日に行うと両国で政府が声明を行いました」


「なる程…」


 戦争次官が意見を言う。


「ドゥーチェ、万が一の為に軍をオーストリアとの国境近くに配備してはどうでしょうか?」


「いや、それはしなくても大丈夫。我が国とオーストリアの工作でこの結果になっているのだから、寧ろ僅か3ヶ月で成功一歩手前まで進んでいる事に安堵するべきか、でもチェコスロバキアは両国が抑えると思うけど、ユーゴスラビアが万が一動いた場合に備えて、ユーゴスラビアとの国境近くに軍を配備しておいて、それと海軍はバルカン半島の情勢悪化に伴いイギリスやフランスによる軍事介入を避ける為にアドレア海を封鎖しておいて」


「ドゥーチェがやったのですか!?」

と戦争次官が驚いていたが


「ドルフース首相と一緒に動いていたのよ。

ところで軍を配備するのと、アドリア海の封鎖は大丈夫?」


と聞いたところ戦争次官と海軍次官が答える。


「問題ないです」


「海上封鎖は保護国のアルバニアまででしょうか?」


「そうだね。その通りに海上封鎖しておいて、その他に誰か報告や質問はある?」


 そこで大臣達を見渡すが、誰も意見が無い様だ。


「じゃあ、戦争次官と海軍次官はその通りに動いて」


「「わかりました」」


「あ、それとドゥーチェ」

とチャーノ外務大臣が何かを思い出した様だった。


「なに?」


「ドルフース首相からなのですが、合併した際のハンガリーとの仲介役を頼まれていますがどうしますか?」


「わかった。アンナ、予定を調整しておいて」


「わかりました」



-オーストリア:ウィーン-

1935年2月15日


 ウィーンではドルフース首相とホルティ摂政が会談を行っていた。私は両国の仲介役を頼まれて、それに対応していた。


「では、オーストリアとハンガリーの合併に両国とも賛成と言いう事で宜しいですか?」


「えゝ勿論」

「はい」


「そして、合併したオーストリア=ハンガリー二重帝国の皇帝に※③オットー・フォン・ハプスブルクにする事を同意しますか?」


「勿論です」

「はい」


「合併するという事は、トリアノン条約を破棄することになりますがそれでも同意しますか?」


「はい」


 なんか私の仲介って、結婚式の司祭の様な感じになってるんだけど、大丈夫なのかな?


 その後、オットー・フォン・ハプスブルクがオーストリアのウィーンでオーストリア=ハンガリー二重帝国皇帝として即位し、世界に向けて二重帝国の再建が宣言された。


 その宣言がされた事でチェコスロバキアが軍を国境に展開させたが、数カ月の睨み合いが続いた後、チェコスロバキア軍が退いた。ユーゴスラビアでも動きがあったが、イタリア軍5個師団が国境に配備されており、二重帝国との国境に軍は展開されなかった。アドリア海が封鎖されてイギリス地中海艦隊が圧力を加えられなかった事もあり、オーストリア=ハンガリー二重帝国の再建が事実上黙認された。


 その日のうちに号外が世界各地で出され、各国では先月にドイツでのヴェルサイユ条約の破棄再軍備宣言についてもまだ記憶に残っている者が多く、各国ではこの出来事に"三国同盟の復活か?"との噂が急速に広まった。

これにより国際緊張度が上がったことは言うまでもない。

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イタリア王国軍記〜美少女ムッソリーニに転生したのでイタリアを改革しイタリア軍にやる気を出させイタリアを勝利に導く〜を

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※補足説明(ウイキペディア参考(一部例外有り))

①モンテ・チェルビーノ:正式名称は山岳スキー大隊『モンテ・チェルビーノ』。ロシア戦線に派遣された部隊の一つで、フィンランド軍と同じ雪中迷彩で山岳を駆け回り、ソ連軍から「白い悪魔」と恐れられた。


②アエロサン:プロペラで推進するスノーモービル。ソ連で開発され雪上での様々な手段で利用された。独ソ戦にも使用されている。


③オットー・フォン・ハプスブルク:最後のオーストリア皇帝カール1世と皇后ツィタの第一子(長男)。オーストリア・ハンガリー二重帝国の皇太子。


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