棒に当たった犬は走り出す

@furen_loren

走り、跳び、数値を超える

「勝利という夢に向かって走る、止まる必要はねぇんだよ!!!!。」


そう発言した人は伝説となった。世界を笑い、世界から愛された男だった、とのちにその男のライバルが語った。陸上という競技を笑った少年は気づいたら外に飛びだし走り出すほど魅せるものがあった。それに影響された内の何万という人間の内の1人の物語。


「えっ!!お前総合運動Bランクまで上がってるじゃねぇか!!」

「スゲェだろ!この前の合宿行ってから感覚掴んだみたいでよ今じゃ運動B3まできたぜ〜正直全国も夢じゃねぇわ!バド頑張ってスポーツ推薦で山内高校行くのが夢だったんだよ」


「はーい、進路の話になりますが大学は基本的にステータスは全員確認されて書類として提出されます。なので少なくとも勉強はD2ランクからC2がないと行きたい大学に行くのは厳しいからまだ高校始まって早々だから遊んでもいいだろ!なんていうアホな考えはやめて早いうちから勉強しておくようにな!」


20XX年、技術が進み人間の能力や才能が全て数値化された世界に変わった。お腹にいる時からステータスは分かり、出産の後に開示される。数値は大きく5つに分類されており、勉学 運動 感性 精神 幸福となっておりそこから細かく勉学なら論理 表現などと細かくまた5つつにそれぞれ分類されるような世界になった。そしてそのステータスにおいてABCDEFの6つの段階に合わせてA1、A2、A3とさらに三つに段階分けされる計18に分類されるような世界になった。このランクの制度は受験、就職から幅広い分野で見られるようになった。制度が導入されてからは以前よりも経済が回りやすく、国が管理しやすい世の中となったがその一方でそれを発端とするいじめや仕事につけない人などが多発した世界となった。そしてこの僕、夏紅悠斗(かもみ ゆうと)もこのランク制度に悩まされている1人である。俺は感性はもちろんの事、幸福、精神、が全てDランクゾーンである!なんなら運動はEランクという高校生とは思えぬステータスなのである!折角高校入学して部活とかしてモテたかったのによぉ!!!これじゃあ高校入ったところで落ちこぼれ真っ只中じゃねぇか、、


「はぁ、モテてぇ」


「授業中に何を考えてんだ貴様は」

と丸めたノートで背中を叩かれた。叩いてきたのは憎き幼馴染である夢供華 結城(むくげ ゆうき)こいつは運を除いたステータスが全てBゾーンという化け物じみたやつだ。大体Dゾーンが中の下ラインでCゾーンが中の上、Bゾーンは都道府県の中だとトップ10レベルでありAまで行くと国の代表レベルまでになってくる。今はまだ世界に数えるほどしかいないがA1、A2レベルは本当に化け物だ。それだというのにほぼ全てBゾーンというこいつは俺の完全上位互換であり、好きな女は取られ、点数ではボロ負けしということで最悪なのだ。


「お前モテたいって言えばいうほどモテなくなるんだからな」


「イケメンに言われてたまるかよ!ゔぁーか!!!」

と全力で変顔してやったらしっかり先生に叱られた。

こいつのせいだ。

そうしている内に授業が終わり放課後となった。


「お前モテないならなんか部活入ればいいだろ」


「部活ねぇ〜、運動ランクが高ければやってんだけどよぉ今の時代ランクがC以上じゃないとまずまず運動すらしないわけよDランクは勉強以外は捨てるってわけ、まあそうしたら全部俺は捨てることになるがな!!!はっ!!!」


「そう嘆くなって、お前最近やってる春のスポーツの全国祭典見てみろよ元々はD

ランクから始めてここまで上り詰めた人も結構いるみたいだぜ。」


「Eランクは居ねぇじゃねぇか!」


「まあ確かにEランクスタートは陸上と水泳くらいだなこりゃ、それも1人ずつくらいでどちらも無名中の無名だなこりゃ、だけどどちらも日本人選手だぜ?」


「水泳はダメだ、気づいたら失神して漏らしたことがある、それから一度も泳いでない」


「最悪なエピソードをどうも!、、、Eランクスタートの選手ならえーと愛莉洲 春音(あいりす はると)っていう人がいるな」


「陸上なんていやだね!あんなただ走るスポーツ誰が悲しくってやるってんだ」


「俺陸上部だぞ?!お前本人の前で批判するとはなかなか勇気があるじゃねぇか、いいか陸上ってのは努力で誰でものし上がれるかっこいいスポーツなんだぞ?」

それに対して俺はへいへいと軽い返事を返し、見たいアニメがあるとそそくさと先に帰ることにした。

家に着いたらいつも通りスマホリビングでいじり好きなyoutuberの動画やTwitterを見るという代わり映えのない時間を過ごし今日もダラダラして明日に備えるかなんて考えてた矢先に母親が今やっているスポーツの祭典が見たいと言い出しリビングに置いてあるテレビのスイッチをつけその番組を開いた。俺も今日放課後で言われたことを思い出し話の話題にしてやるかと思い一緒に見ることにした、ちょうど話していた男子の陸上であり3000mの大会が行われており世界から人が集まっていた。テレビ越しでもランクは見ることができほぼ全員がAかB1という化け物じみた集団であった。そしていざ始まる瞬間が来た審判が「On Your Mark」と言い放った瞬間テレビ越しでも伝わる空が鳴く感覚、糸を針に通すような緊張がひしひしと見ているだけでも伝わった。大きな銃声とともに止まっていた歓声がワワァッー!っと鳴り響く世界の声援を背中に全員が走り出す姿はさながら勇者であった、そんな多くの選手の中1人だけ嘲笑うような顔をしながら先頭に立った1人の勇者がいた。

「愛莉洲が先頭に立った!愛莉洲のリードが止まらなぁい!!!!」

と実況が叫ぶような声を放った。自分でも驚くほど目が離せなかった。人間はこんなにも楽しそうに走るものなのかと、他の選手が真面目な顔をしながらも少しキツそうな表情を見せる中1人だけものすごいリードを開き、レースを心から楽しみ笑うその姿は勇者ではなく

「魔王だ、、、、」

そしてその選手、いや魔王は伝説を残した。

「まさかまさかの大快挙!!!7分26秒0.8!!!日本記録を10秒以上縮めたこれ以上にない快挙です!世界で初めてのEランクスタートが7分半を切りました!!!!!」


「それでは今回の大会で見事優勝しました、愛莉洲さん、何か一言はありますか?」


「さいっっこうに楽しいレースだった。このレースを見てた少年少女!!勝利という夢に向かって走る、止まる必要なんてねぇんだよ!!!!」


言葉が出なかった。バカにしていたはずのものがここまでシンプルで美しいものだとは思わなかったからだ、一歩一歩が綺麗で素人でもわかるほどの努力の音がした、これを現地で見ていた人はどう思ったのだろう、テレビでこれなら現地で見たいという気持ちがどんどん強くなっていった。心が熱くなっている。自分もしたい、彼がEランクからのスタートだったんだ、一緒じゃないか!他の人にはできないことだ、今俺がやれば俺と彼だけの伝説になる。胸が躍る、気がついたら風を切っていた、少しでも彼が見た景色を味わいたかったからかもしれない、気がついたらへとへとになって息が切れていた。そして俺はあいつに電話をかけた。


「俺も混ぜてくれよ。」

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