第248話 いっぱいいる~~。
「ぎゃあぁああぁぁぁああぁっ!! もう!! よるなよるな、引っかかるなぁぁああぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
激走するモジョ車に、それでもワラワラと群がってくるスケルトンたち。
跳ね飛ばされ、粉々に粉砕されても残った手足が
車体のいたるところにぶら下がり、這い上がって車内に侵入してくる骨もあり、ぬか娘たちは、それらの撃退におおわらわになっていた。
「ちょっとこら、やめろやめろ!! そこ入っちゃダメっ!!」
ビキニアーマーの隙間に侵入してくる、煩悩まみれの恥骨たち。
「あいたたたっ!! 噛むな噛むなっ!!」
アルテマも体に群がってくる顎骨を引きはがすのに苦労している。
市内に入ってからアンデッドの密度が増した。
幸い、さっきみたいな
ジルの魔法で何度も何度も撃退してもらっているが、それでもキリがなく。アルテマの魔力のほうが尽きそうになっていた。
そんなとき、
「――――はっ!??」
気絶していた誠司が目を覚ました。
顔を上げて、周囲を見回し、また気絶する。
「いやいやいやいや!! ダメダメ起きて!! 現実逃避しないで!! 貴重な男手なんだから手伝ってよっ!!」
「……無理です無理です、なんですかこれは? ゲームですか? ゲームの中の世界に入り込んじゃってますか? だめなんですよこういうの、若い頃スイートホームってRPGでトラウマ作ってから無理なんですよ」
「ああ~~じゃあ仕方がないな……」
襟を引っ張るぬか娘と拒絶する誠司。
モジョは良き理解者として寛容になる。
「仕方なくないわよ!! 村長さん除霊の研究とかしてたんでしょ!? だったら加勢してよ!! なんか出来ないの!? 法術的なカッコいいやつっ!??」
「無理です無理です。私、知識だけで……術とかなんにも使えません」
「役に立たねぇ~~~~~っ!! ってモジョあんたも噛まれてるってっ!!」
「あいよ」
言われたモジョは冷静に、アクセル全開のままサイドブレーキを引き、ハンドルを回す!!
――――ギャキキキキキキキキキキッ!!!!
制御を失った車は、そのまま社交ダンスでも踊っているかのように道路上を高速回転し――――バラバラバラバラッ!!!!
遠心力に振られた骨たちは一斉に車外に放り出された。
「よっと」
逆ハンを切り、すました顔で制御を取り戻すモジョと車。
骨クズたちは綺麗に掃除され、車内はピカピカになった。
「……あれだな。知識だけでも車なんて案外操縦できるもんだな。こんどはミゾオトシ的な荒業に挑戦してみようと思うのだが」
「思うなそんなもんっ!!」
骨たちと一緒に飛ばされそうになったぬか娘。アルテマとともに、なんとかドアにしがみついていた。
街にはとうとう、パトカーや救急車が出始めてきていた。
機動隊らしき車両も停まっていて、物々しい雰囲気が拡がってきている。
飛んでしまいそうな意識の中、誠司は村長として、どうやってこの騒ぎの説明をすればいいのか涙を浮かべていた。
「見えたぞ、病院だ」
アンデッドどもを踏み潰し跳ね飛ばし、時には回転しながらゴリ押しで辿り着いた総合病院。
あそこに元一がいるのか。
身を乗り出し建物を確認するアルテマ。
ここに来るまでにも、大きな建造物はたくさん見た。
その一つ一つに驚異的な建築技術を感じ、こんな場合でなければ深く感動していたところだが、しかしいまはそんな気分にはなれない。
それでも他の施設とは違う、こちらの世界随一の科学力を感じ、ツバをのんだ。
「……ちょっと、様子がおかしくないですか」
青い顔をさらに青くして誠司が病院を指さした。
言われなくても、モジョも、ぬか娘も異変に気がついていた。
病院の回りには人だかりができていた。
人たちは誰かを背負い、誰かを担いで中から避難している。
病院の窓はところどころ割られていて、その向こうから暴れる人影も見えた。
「あ、あ、あ、あれって……アルテマちゃん……?」
「ゾンビだ……マズイな。連中はスケルトンよりもパワーがある上に、噛んだ人間を同じくゾンビにする呪いを持っている。集団になられたらヘタな傭兵団よりもやっかいな相手だぞ?」
「中には六段たちがいるんだったな?」
モジョがつぶやく。
めずらしく、額に冷や汗を浮かべながら。
――――ガシャァアァァァン――――……。
玄関のガラス扉を破壊し、ゾンビの群れが外に出てくるのが見えた。
人たちは動けない患者を背負い、逃げ惑う。
しかし遅れた者は次々と噛まれ、ゾンビと化してしまっていた。
「た……大変……。も、もしかして……あの中……もうすでにゾンビだらけなんじゃ……」
涙目になるぬか娘。
中にいる六段たちは無事なのだろうか……。
「大丈夫だ。六段たちならきっと耐えてくれている。モジョ、このまま建物内に突っ込んでくれ。一気に合流する。――もう時間がない!!」
「わかった」
ためらわずアクセルを踏み込むモジョ。
ここで怖気づいていてもどうにもならない。
アルテマを信じ、突き進むのみである。
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