第168話 拒絶の悪魔・季里姫⑩
「……ところが……どっこい」
絵空事だと半信半疑なアニオタ。
そんな彼が見てる前で、モジョはカチャカチャとキーボードを叩く。
すると画面のロゴが歪んで消え、しばらくすると妙な雑音とともに、乱れた映像が映し出された。
映像は揺れ乱れて見にくかったが、なんとなくどこかの草原を映しているようにも見えた。
「こ……これは……!?」
その映像を驚いた目で凝視するアニオタ。
ノイズの隙間から一瞬だけ、ドラゴンのようなものも見えた気がした。
「……このあいだジルさんにネットケーブルを修復してもらっただろう……? そのとき使ったアイアンゴーレムがどうもな……回線に影響を及ぼしているらしいんだ……むにゃむにゃ」
「え、え、影響……で、ござるか?」
「……普通に使うぶんには気付かないほどの小さなものだがな。……ハッキング作業を行うと……どうにも思い通りにいかない。……それで調べてみたら、データが一度ありえない場所へと飛んでいた……」
「あ、あ、ありえない場所とは?」
「……最初はどこか海外かと思ったが……実際は、地球外へと飛んでいた」
「ち、ち、違う星とかでござるか??」
「……さあ、それはわからない……。とにかくウチらの回線は、説明がつかない場所を経由してネットに繋がってて……。……ここからはわたしの想像なんだが……もしかして……あのゴーレムを通じて異世界に繋がってしまっているんじゃないかと思ってな……」
「……い、い、い、異世界ですと!? い、いや、そうか……なるほど……それはあるかもしれませぬな!!」
説明を聞いたアニオタは感動したようすで深くうなずいた。
「で、で、で、ではこの映像は何でござるか!??」
「……これも推測だけども……たぶん……ゴーレムと同じ系統の精霊が見ている景色じゃないかなと……わからんケド……」
「す、す、すす……スゴイでござる……」
「で……これをなんとか解析して……ノイズを消していけば……もしかしたらアルテマの手助けができるんじゃないかと……」
「そ、それが……デジタル
アニオタの問いに、モジョは無言でうなずいた。
『……ぐぬっ!! この……
「小僧ではない!! 俺様は明日の聖王国をになう正義のカリスマ、地獄の縁から蘇りし不屈の聖騎士クロード様だ!! うわはははははははははははっ!!!!」
ガキョンガキョンと
聖なる加護を得た小枝は、怨霊の脇差しをことごとく跳ね返し、放たれる破壊の光玉もザキエルの暴風で軌道を逸し、当たらない。
戦いはクロードの圧倒的優勢で進められていた。
聖なる小枝は、怨霊の剣技の隙をぬってプチプチと刺さり、霊体を確実に削り取っていく。
そこへさらに、
「ぬおう、くらえいっ!!
――――どごぉぉぉぉおおおぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!!
聖なる爪を装備した六段のハンマーパンチも加勢される!!
『ぬぐうはぁっ!???』
二人の聖戦士に挟まれた怨霊は防戦一方。
もはや勝負は決したも同然だった。
そんな逆転劇を、複雑な表情で見つめるアルテマに、元一が近づく。
「……こんなことなら最初っから
「いや……うん……。まぁ……結果的にはそうだったかも……な」
アルテマ的には、敵である聖騎士の力を借りるなど屈辱だったのだが、安い意地のために無謀な戦いを挑んでしまった自分のほうが今回は悪かったと素直に認める。
……一件が片付いたらドックフードでも奢ってやるか。
アルテマは、いよいよ怨霊を追い詰めたクロードの元へと歩いていく。
「……おい、そのへんで止めてくれないか?」
無数の聖なる突き、数十発の聖拳を受け、怨霊はすでにボロボロになっていた。
霊力は弱まり、霊体もところどころ欠けている。
ビジュアル的にも着物が(なぜか)はだけ、妖艶な美女の肌が見えてしまっている。
見ようによっては、屈強な二人の男が、か弱い和服美人をひん剥いている犯罪場面にも見えなくはない。
クロードはヨロヨロと近づいてくるアルテマに目を向けず、怨霊に小枝の切っ先を突きつける。
「止めろだと? 馬鹿な、このレベルの悪魔を野放しにする危険性はお前もよく知っているだろう。 ……それとも、横取りするつもりか?」
アルテマの手に宿る
「馬鹿はお前だ。この世界で悪魔をいくら退治しても手柄にはならん。……そいつには聞きたいことがあるのだ」
「……聞きたいことだと? 悪魔ごときにか?」
「悪魔は退治するべき存在だが、崇拝対象でもある。侮辱は許さん」
睨むアルテマ。
クロードは一瞬不満げに眉を歪めるが、小さく肩をすくめると小枝を下ろした。
アルテマは
「お前の負けだ、怨霊季里姫よ。……抵抗すれば聖戦士によって浄化させる。しかし話を聞いてくれれば暗黒騎士によって魔神の元へと送ってやるぞ?」
アルテマの交渉。その言葉にクロードの目が大きく開いた。
「ん? き、季里姫? ……季里? まさか……?」
怨霊は諦めたように力を抜くと、
『汚らわしい神に辱めを受けるくらいなら……魔族の糧に……』
そう薄笑い、話を聞く態度を見せた。
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