第123話 第3ラウンド③
逃げる軽トラ、追う族車。
パヒャラパヒャラとクラクションを鳴り響かせて、ど派手なカウルで風を切り、模造刀を担いだヤンキーバイクが迫りくる。
荷物を満載した軽トラはあっという間に追いつかれてしまうが――――そこに、
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
心底楽しそうなアニオタの笑い声と、
ばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!!!
電動ガトリングから爆射されたBB弾の弾幕がカウンターパンチを食らわせた。
所詮オモチャの弾なのでバイク本体やヘルメットに効果はないが、しかし夏用薄手の特攻服は話がべつ。
風圧で肌にピッチリ密着した布の防御力は、ほぼ0。
そこにダンボールくらいなら余裕で二枚は貫通する威力の弾が刺さるのだ。
100発/秒の連射速度で。
「痛ででででででででででででっ!!!!」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっ!!」
「あ~~でも俺嫌いじゃないっ!!!!」
騒ぎながら、三台のバイクがたまらず後退していく。
残った二台は、空力を無視した、とても頭の悪そうな巨大カウルが盾になって直撃は免れていた。
「あのくそデブおたく、許さねえっ!!」
下がっていく仲間の仇とばかり、二台はスロットルを回す。
加速したバイクは、ガトリングの死角になる車の両脇にそれぞれ回り込むが、
「脇が甘いのはお互い様でござる」
と、アニオタは懐から二丁の拳銃を取りだすと、腕をクロスさせるようにして引き金を引いた。
――――バチバチッ!!
カウルの盾がない、ガラ空きの脇腹にBBがめり込む。
「うのぉっ!??」
「痛ぃぃぃぃぃっ!??!?」
側面が弱点なのはお互い様。
しかし攻撃・反応速度ならこちらが有利。
あわれ舎弟たちは模造刀の一撃をくらわす間も与えられず後退を余儀なくされる。
そこに再び、
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
破壊欲にとりつかれたアニオタの狂笑と、
ばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!!!
数百発の6ミリ硬質プラスチックが鉄砲水のごとく襲いかかった。
ぎゃあぎゃあ悲鳴を上げながら蛇行運転し、離れていく族車たち。
しかし下がっていく舎弟たちを押しのけるように、一台の赤いバイクが上がってきた。
「おのれおのれ、アルテマの手下どもめ!! 雑魚だと油断していたがなかなかやる。しかし本気を出した俺を止めることなど、できはせぬぞ!!」
ひときわ派手で趣味の悪いカウルには『九郎専用』のステッカーが貼られていた。
それにまたがるのはもちろんクロード。
予想外に強かったアニオタたち。
いきり立ったクロードは素早く呪文を詠唱し、
「そんなオモチャの弾など我が神聖魔法の前では無力だと言うのを教えてやる!! くらえ!! ――――ザキエルッ!!!!」
風の神聖魔法を放ってきた!!
―――――ドゴッ!! ゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!
「ぬ、ぬお!! これはいかんでござる!!」
生み出された暴風は荒れ狂う竜巻となって軽トラを包み込んだ!!
射出されたBB弾はその風の渦に飲み込まれ、前には飛ばず、空へと舞い上がる。
弾だけではない。トラックも
「本気を出した我がザキエルは地竜(子供)すらも天へと舞い上げる!! そんな華奢な車ごとき、荷物ごと空に放り上げてくれるわ!! うわっははははははははははははははははははははははははーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
と、高笑いする
「とりゃ!!」
窓から身を乗り出したぬか娘は
すると――――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォ〝↺〟
ザキエルの竜巻は方向を変え、
「はははははははははははははははははは――――はぁっ!??」
クロードに向かってはね返っていった。
「ばっかじゃないの。魔法は効かないって言ってんじゃん」
「まぁ……言ってはなかったけどね。でもこれで学習して襲うのをあきらめてくれると嬉しいんだけどな」
お、おのれ~~~~おぼえていろよアルテマ~~~~~~~~!!!!
絶叫を残し、自らの魔法に呑み込まれ、もみくちゃになりながら吹き飛ばされていくクロードと偽島組の社員たち。
それをバックミラーで確認しながらヨウツベは胸をなで下ろし、一息ついた。
「というのが今回の戦果報告になるね」
「「おお~~~~!!」」
ぱちぱちぱちぱち。
戦闘の一部始終を記録した映像。
それを見せてもらった一同は、上機嫌で拍手をくれた。
戦果を挙げた三人は誇らしげに胸を張り、祝杯の発泡酒を高らかに掲げた。
「イェ~~イ!!鏡の効果はバッチリだったよアルテマちゃん!!」
「うむ、そのようだな。さすがお師匠、良いアイテムを授けてくれた」
「しかし見てみいこの情けない顔、こりゃええ酒の肴になるで……ヒック」
「ああ、そうだな飲兵衛。ワシにも注いでくれ」
ザキエルに呑み込まれる瞬間。
その間抜け顔を静止させ、みなで笑った。
とくに元一はご満悦で、いつもより三割増しで盃が進んでいた。
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