第93話 アルテマの存在
モジョらのトラブルと、異世界の窮地を一挙に解決したアルテマは、いよいよ本格的に異世界へ帰る手段を見つけねばならぬと頭を悩ませていた。
もともと最初から考えていたはずだが、いろいろな事件が重なり手を付けられないでいたのだ。
しかし、そのことをぬか娘たちに伝えたら、
「ダメダメダメダメダメダメ!! アルテマちゃん、帰るなんて絶対ダメ!! なんで!? どうしてそんな寂しいことこと言うの!? 私のこと嫌いになったの、言って何でも言って、私直すから!! 努力してアルテマちゃん好みのお姉ちゃんになるから、捨てないで~~~~~~~~っ!!!!」
と、あらぬ誤解を招きまくる、ぬか娘のリアクションは予想出来ていたが……。
「待て……アルテマ……。お前にはまだまだ覚えさせたいレトロゲーと裏技が山ほどあるのだ……それをすっぽかして帰るなど……わたしは絶対にゆるさんぞ……」
ドロドロドロと怨念を込めて睨みつてくるモジョと、
「ア、ア、ア、ア、アルテマさんが帰るですとぉぉぉぉぉぉぉぉ??? そ、そ、それはつまり、僕とルナたんを結びつける(妄想)役目を放棄すると言うことですなぁぁぁぁぁぁぁ!!!! な、な、な、ならばこのアニオタ、命を賭して帰郷を阻止させてもらうでござる!! ぼ、ぼ、ぼ、僕とルナたんの明るい家族計画の為に、わ、わ、我は蛇にも鬼にもなるでござるよ!!!!」
アニオタも、かつて見たこともない敵意を表してくる始末。
「帰るだなんて!! なんて勿体ないことを言うのです!! アルテマさんはいまや異世界と私たちとの架け橋。せっかく繋がった両世界を再び分断すると言うのですか??? 互いの世界の発展のため、アルテマさんはここに留まって己の使命に尽くすべきだと思います!! ええ、思います!!」
ヨウツベにまでもそう強く説得されて、アルテマは自分が判断すべき道を見直すべきではないかと考え始めてきた……。
確かに彼の言う通り、帝国にとってもこちらの世界との交流は計り知れない利益をもたらす。こちらの世界にとってもそれは恐らく同じで、除霊をはじめ悪魔憑きへの対応は帝国の技術が大いに役に立つだろう。
なれば自分は近衛騎士としての役割に固執せず、両国の仲立人として職務を切り替え立ち回るのが帝国にとっても正しい判断なのではないだろうか?
――――と、言う話をジルに相談したら。
『はい。……と言いますか私も皇帝陛下も……すでにそのつもりで動いておりますが……?』
何をいまさら、な声色であきれられた。
「い……いやいやいやいや、おかしいおかしい。おかしいですよ師匠??」
『はい? ……なにがおかしいと言うのでしょう?』
「だって先日『こちらの世界へ帰ってくる手段は、もう見つかりましたか?』とか、いかにも早く帰ってこい的な発言を……」
『ええ、それはそうでしょう。帰って来られるものならば、帰ってきてほしいですもの。ですが、だからといってそちらの世界との関係を絶ってまで、とは申しておりませんよ?』
「い、いえ……ですが私には近衛騎士として陛下に賜った栄誉ある使命が……!!」
『陛下の護衛の任でしょう? たしかに重要な仕事でありますが、あの陛下は滅多なことで傷つきはしません。……いまだ老獪にして帝国最強の剣士なのですから。それに――――』
ここは元一の家、アルテマの自室。
魔素の節約にと、
『〝アルテマ殿が側にいないほうが殿下の行動が慎重になる〟という分析結果が最近、内務のほうから提出されまして……。それに関しては私も、そうだなぁ~~と納得しておりますのよ?』
「ゔ……い、いや……そ、それは」
『そりゃ、あなたのような
「い、いやその……まぁ……」
『そもそもあなたは、こちらでは一度死んだことになっています。なので当然、記録上は任務どころか騎士位すら国へ返還されております』
「…………………………………………は?」
『仕方ないでしょう? あなたはその歳まで独身で、私という育ての親はいましたが、戸籍上は天涯孤独。死ねば位も財産も、全て国へと戻されますよ?』
「ゔぇ!?? で、で、で、ではいまの私は!??」
『暗黒騎士でもなければ近衛騎士でもありません。住んでた借家も解約されておりますし、僅かな財産も全て孤児院へと寄付されました』
小声で(……まぁ……寄付の件は、あなたならばきっとこうするだろうと私が勝手に判断したのですが……)もごもご続けるジル。
「と、と、と、ということは……私は……いま帝国では……どういう立場に……」
汗をだらだら
『ですから……無職、無一文のイキオクレおばさん……いえ、その……記録上ですよ? あくまで記録上です!!』
「むあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! な、なんてことだぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!」
布団を頭からかぶり、まんまるになって悶絶するアルテマ。
その様子を悟り、慌てて取り繕うジル。
『き、騎士の位も、財産も、きっと帰ってきます!! 殿下ならばそこは何とでもしてくれるでしょうが、しかしアルテマ』
ジルは声のトーンを穏やかに落とし、
『こうなったのも全て導かれし運命……と、魔神様のたわむれに、しばしお付き合いするのも
師匠であるジルのその言葉にアルテマは布団の中で半泣きしつつも、じっと考えを巡らせるのだった。
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