にんにくにんにん

バブみ道日丿宮組

お題:清い悪魔 制限時間:15分

『にんにくは入れるだけで幸せになります』

 毎夜、悪魔がやってきてそう話す。

 言ってる間にご飯ににんにくを上乗せされるので、回避しようがない。そもそも悪魔とは異界の存在、部屋に侵入するのをとめることは人間にできない。悪魔がいるなら、天使もいるはずだと思うのにその天使は一向に助けに来ない。やっぱりあれなのだろうか、悪魔が寄るくらいに悪いことをしたというのか。

 涙目になりながら、にんにくまみれのご飯を食べる。

 だんだんと調教されてる気がしてならない。

 はじめは嗚咽感があったというのに、今じゃ山盛りにされてもへこたれない胃が誕生してしまった。

 ちなみに外食してても山盛りにされる。

 当然他の人間に悪魔は見えてないので、突然山盛りになったご飯に皆驚いてた。わたしもはじめは驚いたよ。家限定だと思ってたからね。

 こんな状態だから、飲み会はできやしない。誘われても毎度断り続けてる。学生といえば、そういったイベントが月に何回か存在するが、ほんと勘弁してほしい。

 お泊りは夜食後にきてもらえれば、そこに悪魔はいないし、にんにくもないので大丈夫。

 とはいえ、にんにくの匂いは存在してる。

 口臭はなんとか何回かの歯磨き、マウスウォッシュで消えてる。

 キスをするときににんにくの匂いがするなんて拷問に近いだろう。

 もっとも彼女はそれ以上に香水の匂いが強いから、肌を嗅ぐとちょっとつらい気分になる。

 あなたも香水をつけたらいいのにと彼女はいうが、あまり好きじゃない。化粧だってほとんどしない。もちろん、着てる服だって適当にやすいのを着てるだけ。

 ため息を何度も吐かれたし、へんな下着を買わされたりもしてる。

 けれど、悪魔よりはいい。

『増量中』

 にんにくチューブが二本目に突入するのを見守る。

 にんにくを手で妨害できればいいのだけど、ご飯の上に到達するまでは不可侵条約でもあるのか触れられない。

 今日も山盛りにんにくご飯が誕生した。

 満足した様子で悪魔がすぅーと透明になり、やがて消えた。

 何度もみた光景だ。

 誰かにいったとしても信じてはもらえないだろう。

 せめて……せめて、空になったにんにくチューブぐらいは持ち帰って欲しい。

 そう願いつつ、わたしは箸を進めるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

にんにくにんにん バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る