『自殺防止機能住宅』

やましん(テンパー)

『自殺防止機能住宅』


 『これは、ほぼ、すべて、フィクションです。』


        



 10年前


建築士


 『完成です、いまや、引き渡しをいたします。』



やましん


 『ありがとう、ありがとう。』



建築士


 『ご要望のように、さまざまな、楽しい機能を用意しています。なに、危険なものはありません。しかし、解決に多少時間がかかる機能もあります。もし、地震とか、洪水のような、遊んでられないときは、解除してください。これが、リモコンで、こちらが、予備二個です。この赤いボタンを押すと、機能を解除できます。ただし、ひとつだけ、解除できない機能があります。自殺防止機能です。』


 『ははははは、まあ、必要ないかも。だいたいは、順調だしな。』


 『まあ、あくまで、よぼうですから。お互いに、何が起こるか、分からないものですよ。』



       *******



 それから、10年。


 建築士さまは、すでに、原因不明で、亡くなっていました。


 


 一方、やましんは、両親が亡くなり、びーちゃんは、家を出て行き、やましんは、うつ状態やら、さらに尿管結石から水腎症になり、つまりは、体調を崩して、仕事ができなくなり、お客様からも、職場の内部からも激しい非難を浴びて、退職を余儀なくされたのです。



 しばらくは、自宅と遊んで暮らしました。



 でも、蓄えはすぐになくなり、打つ手が尽きました。


 『もはやこれまで。』


 あるばん、やましんは、包丁を手に取り、お腹に突き立てようとしました。


 すると、なにやら、強力な力が働き、包丁は、床に落下してしまいました。


 『な、なんと。』


 床から、引き剥がそうとしましたが、びくともしません。


 しかたないから、別の包丁を持ち上げようとしましたが、まったく、動きません。


 『な、わんと。』


 やましんは、では、と、用意していた縄を天井に掛けて、首をつろうとしました。


 『よし、よし。』


 おりしも、台風の接近で、あたりは暴風雨の真っ最中です。


 ついに、電気が止まりましたが、予備の蓄電池が稼働して、一瞬真っ暗になっただけで、すぐに復活しました。


 8時間は持つようになっております。


 『いざ、さらば。』


 やましんは、椅子を蹴っ飛ばしました。


 ぐしゃ。


 と、なるはずが、なんと、天井板が外れました。


 『いたたたたた。』


 年をとったぶん、動きは悪くなっております。


 『くそ〰️。あ、これが、自殺防止機能かあ。』


 やましんは、ようやく、気がつきました。


 『いややややや。あれは、冗談で言ったんだからな。よし。階段から落ちてやる。』


 2階に上がったやましんは、飛びました。


 『ちゃあ〰️〰️〰️〰️〰️〰️!』


 すると、階段の下に、なにやら、マットレスみたいなものが、ぶあ、っと、現れました。


 体操選手みたいに、跳ねあがって、みごとに、着地です。


 『ぬあああ。やるな。くそ。ガスだ、ガス。』


 台所に行き、ガス管を外し、放出して手には、着火器を握りました。


 すると、なにか、おかしいのです。


 なんとも、美味しそうな、ステーキの臭いが、あたりを包みました。


 『な、な、な、な、な、な。』


 着火器を噴射しましたが、なにも起こりません。


 やけになって、頭を、壁の角に打ち付けましたが、壁が瞬時にスポンジか、お豆腐みたいになります。


 『ちょわ〰️〰️〰️!悪夢かあ〰️〰️〰️!』



 その時です、激しい電光と雷さまの轟音とともに、玄関が開きました。


 そこには、真っ黒な影が、浮かび上がりました。


 『来たかあ。ついに、悪魔が。』


 そいつは、ゆっくりと、入ってきました。



 『なにやってるの。ほら、ステーキ弁当買ってきたわよ。』


 びーちゃんが、久しぶりに、やって来たのです。


 やましんは、着火器を持ったまま、椅子に崩れ落ちました。


 脳梗塞を起こしたようでした。

 

         🌞

 

 たまたま、びーちゃんが、来ていたのが、幸いしました。


 病院に運ばれましたが、ま、対処が早かったため、大したことはなく、一週間後には、解放となったのです。



 さて、やましんが言う、自宅の機能については、びーちゃんが、別の建築士さまを呼んで調べたものの、変わった仕掛けは、何もなかったのです。



      □□□□□□□□□


      🏘️

 


           おしまい

  



 

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『自殺防止機能住宅』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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