第6話(僕+私)のデートリベンジ
「もう出れるわ。」
「わかった。じゃあ出ようか。」
「行ってらっしゃい。」
「楽しんできてね〜!」
僕と京は玄関で靴を履き、奏多と楓に見送られて玄関を開ける。
この家に引っ越しておよそ一週間が経った。そろそろ家にも慣れてきて、動画配信を始める時期が迫ってきた。
最初のうちは動画配信も手こずるだろうから休日が取れるかが怪しい。
そのため早いうちに二人きりのデートをしておこうという事になったのだ。
僕達はエレベーターを降りて二階通路を歩いて駅の改札へと向かった。
今回僕たちが向かうのは隣の駅にくっついているアウトレットパークだ。
前回買いに行けなかった僕の夏服を買いに行く。
「雅。」
「なんだ?」
唐突に京が僕の名前を呼んで腕にギュッとしがみつく。
「無茶は駄目よ。」
前回の事を思い出したのだろう。『まずは自分の命を大事にしてね』と京に言われた。
「もちろんだ。可愛い京のお願いだ。約束は守るよ。」
僕はそう言って京の頭を撫でて改札を通る。少し周りからの視線が多い気がするが、今回僕らは楽しみに行くのだから気にしていられない。
三階にあるホームに出てくる。乗り込むホームは僕と京が奏多と楓さんに騙されて、四人で遊園地に出かけた時に電車に一緒に乗りこんだホームだ。
この時のことを思い出すと、京は随分(僕に対して)丸くなったなと感じる。
当時僕は京に嫌われていたと思っていたし、敬語だったし、名字呼びだった。今のこの関係があるのもほとんど京の努力のおかげなのだ。
「懐かしいね。」
いつもの少し上からな言葉ではなく、甘えるような声で京は僕に話しかけてくる。
「そうだな。あの時は二人に完全にしてやられたからな。」
「そうだね。私達を繋ぐって名目のはずが、二人が結ばれちゃったんだもの。」
「でもあれがあったから今があるんだよな。」
「そうだね。」
僕らは電車を待ちながら懐かしい話をした。
「雅、手、繋ご?」
「はいはい。」
電車が接近する放送が鳴り始め、京は僕と手を繋ぐ。電車のドアが開くと2人で手をつなぎながら席の端っこを京に譲って二人仲良くお隣に座った。
「人の気も知らないで...ねぇ...」
この言葉は二人が初めて共感した内容だ。
「懐かしいね。まだあれから一、二ヶ月くらいしか経ってないのにな。」
「無言で並ぶ私たちの目の前であんなにイチャイチャされたらこんな感想も出るわよ。」
「だな。」
自分たちは目の前の空席に奏多と楓の二人を当てはめる。
「でも、今回こそ私達が楽しもうね!」
「ああ。そうだな。」
電車のドアが閉まり、動き出す。段々と風景は住宅地へと変わっていく。そしてあっという間だが、隣の僕らが降りる駅の放送がかかった。
僕らは手を繋いだまま立ち上がった。京を見て美しいあまりに盗撮する輩もいたので、僕が必死に隠していた。
僕だけの京の写真がネットや誰かも知らない奴の手に行くのがどこか気に食わなかった。
京はそれに気づいたのか、
「私は雅のものだから心配しなくても大丈夫よ。気にしてないで楽しもうよ。」
「はは、京には敵わないな。じゃあ降りるか、」
「うん!」
二人は電車を降りて直接的駅と繋がるアウトレットパークに入っていくのであった。
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この後二人は何事もなくご飯を食べたり服を選んだりしてとりあえず当初の目的を達成させた。
「いやぁ、京に選んで貰えるのは心強いなぁ。」
「まぁ私は服とか好きだから。役に立てて嬉しいよ。」
「そっか。ありがとな。」
雅は京の頭をポンポンと手を置き、撫でた。
「んふふ〜」
京は頭を撫でられて余計にご機嫌になり、雅の腕にしがみつく。
「おっと、」と一瞬バランスを崩すがそのまま体勢を立て直して、ショッピングを続ける。
絶世の美男子+絶世の美少女のカップルという構図に周りの人の目を奪っては、盗撮などもされるが、楽しんでいる二人からすれば気にすることが嫌なことであった。
雅は京を、絶世の美少女だとは思ってるが、自分のことは普通だと思っている。逆に京は雅の事を絶世の美男子と思っているが、自分のことは雅と同じく普通だと思っている。
なので2人とも変に自分を隠そうとせずに堂々とアウトレットパーク内を歩き回った。
時は夕方頃。夕ご飯は買って帰ろうと思い、二人はアウトレットにくっついているフードパークに入った。
メールで奏多と楓に
[晩御飯買って帰るけど何がいいかしら?]
と送ると、
[もう食べているから気にせず楽しんで!]
と返ってきた。
「楓もこういってる事だし、ゆっくり食べましょ!」
「そうだね。」
二人はこれに甘えて二人でゆっくり美味しいご飯でも食べようと思い、和食の料亭に入ることにした。
〈いらっしゃいま...せ...〉
店員さんは二人を見て一瞬固まる。
「えっと...二人なのですが、」
〈あっ!すいません。二名様ですね、こちらご案内致します。〉
店員は二人の美貌に見とれたのか、一瞬固まってしまった。しかしその後の雅の言葉で謝罪してすぐに案内してくれた。
窓が大きい部屋だ。外が見えるので外からも僕たちが見える。まあ飲食店なんかは普通そんなものだ。気にすることも無い。
僕達は牛鍋と、旬のお魚のお寿司の定食を頼んだ。
「ふう、沢山お買い物したわね。」
「そうだな。選んでくれて助かったよ。」
「私が好きでやったことよ。にしてもやっと一息つけるね。」
京は広いアウトレットパーク内を歩き回ったのにあそうとう疲れたのか、座布団の上でグテ〜とする。
「ははは、まあ食べたらもう帰るだけだからもう少し頑張ろうか。」
「ええ。そうね!」
二人はこんな会話をしながら料理を待つのであった。
しかし、二人にとって本当に疲れる出来事が起こるのはこれからなのであった。
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読んでくださりありがとうございます。
もしこの作品を気に入って下さったら、次回も是非よろしくお願い致します。
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