ライト・ドラッグ

村瀬 雪

ライト

誰かが言った―――ライトは麻薬だと

曰く、使用時に興奮物質を生み出す

曰く、ひどく依存性がある

曰く、自らの存在さえも錯覚させる

曰く、曰く、曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く…


そんな言葉を…

ある人は笑った。そんな特性があれば世界はとっくに終わっていると

ある人は怒った。自らの夢を壊す奴は許さないと

ある人は喜んだ。素晴らしい独創的な発想だと


しかしその妄言が0と1で構成された世界を通じて広まったころ、誰かが言った。

―――遠くない未来、ライトの効果が表れると

―――中毒者たちによる正義なき暴動が行われると


果たしてその言葉は現実となった。

自らを神と名乗る中高生が続出し、現行の教育体制への反旗を翻した。

依存性に苛まれる中高年が続出し、勤労の義務を放棄した。

興奮物質に中てられて、トラック事故が多発した。


そんな状態になって初めて政府はその重い腰を上げた。

曰く、ライト規制法を施行すると

その法を否定するものは―――誰もいなかった

その時すでに中毒者は余すことなくトラックに牽かれ遠い世界に旅立っていた。



「これが後に言うライト・ドラッグ騒動の概要です」

歴史的麻薬事件、新米教師の説明だったが伝わっただろうか?

「センセー!しつもーん」

「えーと…鈴木さん何か分からないところが?」

「ライトって何なんですかー?」

おっと重要なキーワードを説明に入れ忘れていたようだ。

これじゃあ分からない人も多かっただろう。


「ライトっていうのは、ライトノベル―昔の本の略称です」



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ライト・ドラッグ 村瀬 雪 @yuki0sikase

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