ドミノ倒し

 Mさんが自宅でご飯をつくっていたときのこと。

 ふとした拍子に包丁を落としてしまった。


 するとセットした覚えのないキッチンタイマーが鳴り響き、冷蔵庫がひとりでにパカッと開いた。


 刹那、Mさんの脳裏を直感がよぎった。

(冷蔵庫のなかを覗いたら絶対にダメだ)

 そして中を覗かないようパタンと閉じた。


 それからすぐに住んでいたアパートを引っ越したという。




「Eテレで『●ゴラスイッチ』ってありますよね。なんだかよく分かんないけど、アレみたいに良くないことがドミノ倒しに起きるんじゃないかな……って」「それをすんでのところで回避したのかな~」




 喫茶店の一室で、「怖くはないけど、不思議な話」ということで聞かせていただいた。 ただ、少し不満足だったので、ついいたずら心から


「本当にそれで終わりだったんですかね?」 と、いじわるっぽく口にしたとき


 ガチャン!カラカラカラ・・・


 机の真ん中側、触らずに置いていたMさんのソーサーが、まるで卓上で回したコインが最後に倒れるときのように、カタカタと揺れていた。

 そしてカップの方は、地べたに落ちて真っ二つになっていた。


 

「大丈夫ですか」という店員の声をよそに、Mさんは青い顔をして去っていってしまった。




 それから追加取材の連絡を何度か送っているが、Mさんからの返事はいまだにない。

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