第26話
「……ッ!?!?」
僕の言葉。
それは今、僕たちの目の前に立っている勇者の動揺を容易に誘い、心を動揺させる。
「お、俺は……」
体を震わせ、声を震わせる勇者。
そんな勇者を僕はただただ見つめながら隣に立っているリーゼさんのフードを取る。
「何をするのじゃ!?」
いきなりフードを取られて動揺するリーゼさん。
「あ……、アル、ビノ……」
そんなリーゼさんを見て勇者は呆然と口を開き、か弱い言葉を漏らす。
「彼女は何もしていない。両親を無惨に殺され、村人から迫害されているのを僕が発見して助けた」
ここからだ。
僕は勇者に語りかけるように口を開く。
「……な、何故……そ……れを……」
僕はリーゼさんをことを無視して言葉を話す。
「対して君は何をしただろうか?平然と一つの国家に住む人間を全て虐殺した。男も女も子供も……両親の目の前で子供は殺された。両親の手で己の愛する子供を手にかけさせた。考えたくもないような拷問にかけた。女性は等しく犯された」
「……」
勇者の表情がこれ以上ないまでに歪む。
「その中に行商人として出向いていた僕の両親も含まれていた」
「「……ッ!?!?」」
僕の
「父と違い、まだ形の残っていたお母さんの死体には……僕のお母さんに人間としての尊厳なんてなかった……何故?」
僕はただただ目の前に立つリーゼさんを見つめる。
「僕のお父さんも、お母さんも行商人で神に祈りを捧げる敬虔な宗教の信徒だった。なんで神様は僕のお父さんとお母さんを殺すのを許したの?なんで神の使いを名乗る貴方達が僕のお父さんとお母さんを殺したの?」
「そ、それは……」
勇者は何も出来ずに震える。
悪魔の子たるアルビノを前にしても何もしない……ずっと固まっている。
「僕は神を許さない。僕は人類の守護者を騙る勇者を許さない」
全て予定通りに。
「お前はただの犯罪者。人を殺す悪魔の子だ」
幻術魔法を密かに発動していた僕は、背後から勇者の心臓に向かって手に持っていたナイフを突き刺した。
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