第18話

 地下室にある修練場。

 そこは確かに物がなくて、きれいになっていた。

 そんな修練場において、僕とミリーナさんは互いに向き合っていた。


「んーッ!はぁー」

 

 僕は息を大きく吸って吐く。

 僕の前に立っているのはミリーナさん。

 実力的には今の僕よりも圧倒的に格上である相手。

 彼女は一族のみに伝わる特殊な術である『創造錬成体操術』を使うことが出来る。

 その力は絶大であり、この国の騎士団長より強い僕を容易に超えるだけの実力を持っている。


「うむ。まぁ、では始めるのじゃ」


「うん……わかった」

 

「えぇ。わかったわ」

  

 リーゼさんの言葉に僕とミリーナさんは頷く。


「……ッ」

 

 先手必勝。

 今の僕の実力は全力ではない……だけど、そう簡単に負けるのは癪に障る。

 僕に勝ち目があるのは何もさせずに勝ってしまうこと。


「はやッ!?!?」

 

 一瞬でミリーナさんの背後へと回った僕は懐から三本のナイフを投げつける。


「ちっ」

 

 僕の投げつけたナイフ……それは簡単に止められる。

 ミリーナさんの背中より生えてきた謎の白い手によって止められる。


「……」

 

 ミリーナさんの背中。

 そこには謎の機械のような二本の腕がついていた。


「……」


 確かそんなものもあったような気がしたなァ!おい!

 ミリーナさんが出せる創造錬成体には制限があり、わざわざ彼女に自衛能力をもたせる必要がなく、そいつの存在を完全に忘れていた。


「『創造錬成体』」

 

 ミリーナさんが魔法を発動し、何もないところからぼこぼこと人型の人工生物が出てくる。


「……」


 どうしようかなぁ。

 十体近く出てきた人工生物を前に僕は頭を抱えた。

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