第15話
「遅かったわね。財布の持ち主は見つかった、ってことかしら?」
「うん。そうだね」
お店のほうへと戻ってきた僕はサーシャさんの言葉に頷く。
「ちょっと仲良くなって話し込んじゃったんだよね」
「なるほどね……再来は期待していいのかしら?」
「ん?あっ、いや、別に再来するように頼んでないから、来ないんじゃない?」
「もー。なんでよ。そこは再来してくれるように頼むところでしょ」
「いや、最低賃金でこき使われている僕どうせお客さんが増えたところで僕の給料は上がらず、仕事が増えるばかり……お客さんを呼び来む理由なんてないじゃんか」
僕の言葉。
「……」
それに対してサーシャさんは沈黙を貫く。
「給料を増やしてくれてもいいんだよ?」
「さぁーて!夜も忙しくなるわ!早く始めていきましょう!」
あまりにも下手すぎる会話の逸らし方ののち、サーシャさんは意気揚々と仕事を始める。
「はぁー」
そんなサーシャさんに僕はため息をつきながら、開店準備を始める。
「あ、ちなみに結局新しい従業員は雇うことにしたの?」
僕はまだ自分が店から出る前に話していた内容を思い出し、僕は中年のほうに向いて尋ねる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
僕の質問。
それに対して大きな叫び声が返ってくる。
「俺は何も聞いていないッ!!!!!」
空気を震わせる中年の言葉。
「はぁー」
それを前に深々とため息を吐くサーシャさん。
「これが結果だよ。結局何を言っても首を縦には降らなかったよ。こいつは」
心の底から忌々しそうにつぶやくサーシャ。
結局心変わりさせることは出来なかったようだ。
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