幕門1
僕がマキナに向ける感情は一体何なのだろうか?
「ふんふんふーん」
僕は鼻歌を歌いながらせっせっと汚く洗濯物を干しているマキナをぼーっと眺める。
「……」
僕の中にあるマキナに向けた感情はなんだろうか?
マキナは僕が生き残るための道具でしかない。
そう思っていた。そうであると思っていた。
「……」
だが、それは僕の中で変わってきていた。
既に僕には「僕」しかいないと思っていた。幼き頃の、この世界の「僕」は死んだのだと思った。
だが、違った。
かつての僕の中にあった優しさ。
両親を殺され、ありとあらゆる人権が失われる中での生活に居てもなお尽きること無かった優しさ。
両親を殺した相手すら持っていた狂おしい優しさが堕ちて……いや、昇華していく。
「僕」にとってマキナだけが初めて手を差し伸べてくれた人だった。
マキナ以外は「僕」を殺そうとする敵だ。
「ギリッ」
マキナが魔王になる……?マキナが僕以外の誰かと仲良くなり、僕の知らないマキナが息をする……?
「マキナ……」
そんなの、許せるわけないよね。
僕にはマキナしかいないのに。
僕にはマキナ以外どうでもいいのに。
「マキナ」
「「僕」」はマキナの名を呼ぶ。
「マキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナ」
僕の中に残っていた全人類に向けられていた底なしの優しさがマキナだけに向けられ……歪んでいく。
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