第14話

 人間世界に根付いている『宗教』。

 それは非常に根深く、排他的。

 すでに人間社会における宗教は一つしか存在せず、その『宗教』に名前はない。宗教と言えばそれが出てくる。

 この人間社会において『宗教』は一つしかないのだ。


 五大国。

 そんな人間社会において大国として君臨する五つ国家が存在していた。

 

 宗教の総本山であり、教皇の住まうマリスト神国。

 急速に領地を拡大し、世界最大の軍事国家であるリース帝国。

 長い歴史を持った伝統的な国家であるナキア王国。

 大陸から少し離れたところに存在する島国であるミーリスト連合王国。

 多くの小国が集まって出来た世界最大の領地を持つアルミア連邦。

 

 この五大国のトップとして君臨している男たちがマリスト神国に集まり、会議を開いていた。

 議題については『宗教』に対して盾突き、悪魔の子であるアルビノの手を借りている背教者の住まう国家をどうするか。


「人ならず愚か者を断罪するための……十字軍の派兵を行う。その決定に異議はあるまい?」

 

 会議が始まると同時に言葉が発声される。この場における最長齢の老人の口から。

 そこに駆け引きもクソもない真っ直ぐな言葉。

 この世界を照らす宗教の頂点に立つ教皇にしてマリスト神国の王でもある老人は己に楯突く者がいないと思っている。


「うむ」


「異議なし」


「全面的に支持しよう」


「神の御心のままに」


 そして、それは間違いではなかった。

 四大国の王は楯突くこともなく老人の言葉に頷く。


「軍はどこが派遣する?正直なところ、十字軍を作るまでもなく容易に撲滅出来ると思うが……」


「いや、十字軍を組織する。これは決定事項である。二度と神に逆らう愚か者が出ぬよう、知らせねばなるまい。人間社会の全てを集結させる。勇者も出す」


「……あそこから人類を根絶やしにするつもりか……」


「うむ」

 

 悍ましい……そう表現することしか出来ない言葉に老人は当たり前かのように頷く。

 そして、それに対して反対の意を述べられる者はいない。

 こうして歴史上類を見ない大規模な大軍団が結成されることが決まった。

 老人だけは知っていた。長年世界のどこかに潜み続けているアルビノの脅威を。

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