第49話

「うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 マキナでさえも蒸発させるような強大なエネルギーにその身を包まれたダグラスは己の死を覚悟した……人生最後の絶叫を上げる。


「ァ?」

 

 だが、ダグラスは死ななかった。

 理解出来ない現実を前にダグラスは呆然と声を漏らす。


「……?」

 

 そんなダグラスの心臓を背後から僕の手に握られていた聖剣が貫く。


「ごっぷ……」 

 

 ダグラスの口から血が溢れる。


「き、貴様……」

 

 ダグラスは体を動かし、自身の背後へと振り返り、視線を送る。

 心臓を貫かれ、胸から多くの血を流している僕を。


「残念。僕は貫かれると同時に幻術を使ったんだよ」

 

 相手を幻術に嵌める。

 それはかなり難易度が高い。

 

 そもそも幻術というのは魔法とは違う……別の解明出来ない謎の力によって引き起こされる現象であり、幻術に対する適正が一番ゲームの中で高かったのがアル……つまり僕なのだ。

 

 そんな僕であっても警戒心MAXのダグラスに対して幻術をかけるなんて不可能である。

 それに幻術なんてちっぽけな幻を見せるだけだ。ダグラスの拳が貫いた相手が僕でなくすでに死した男に出来るような幻術なんて存在しない。

 

 僕がしたのは殺したことを確認し、安堵して警戒心を緩めたダグラスを簡単な幻術の嵌める。

 ただそれだけ。


「さようなら。やっぱり君は馬鹿だったよ」

 

 僕は聖剣をダグラスの胸元から引き抜き……心臓を貫かれたダグラスはそのまま地面へと倒れた。


「けほっ!」

 

 そして、僕も地面に倒れる。


『大丈夫ッ!?」


「あ、あぁ……大丈夫だとも」

 

 無理やり心臓の位置を右にずらして直撃を避けたけど……これはキツイなッ!色々と!痛みも、ダメージも正直僕の予想を超えている。


『は、はやく回復しないと!』


「わ、わかっているよ……」


 僕はぽっかりと穴が空いた自分に回復魔法をかける。

 マキナから貰った闇魔法以外使えない僕だが、聖剣と魂が同期した僕は聖女様お得意の回復魔法を人類最高峰レベルで使えるようになっていた。

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