第44話

 僕の前に居る敵は全部で五人。

 アースライト公爵家の墳墓を襲ってきたヴィーナス公爵家の方の配下かな?


「……」


 彼らは僕の言葉に対して一切反応せず、無言のまま動き出す。


「……」

 

 僕も口を閉じ、彼らの攻撃を捌くことに専念する。

 口を開いても無駄だ。彼らは何があろうとも口を割ることはないだろう。こんなところの小さな舌戦で沈黙を保つことに決めている裏に浸かった人間から情報を盗むことは難しいだろう。


「……ふむ」


 僕は彼らの攻撃を捌きながら戦いの癖、連携の癖を見抜ききる。


「君たちってばロボットみたいだね。本当に自分を持っている?可哀想だなぁ、生きてて意味ある?君たち。誰にも知られず、誰からも愛されず、こうして命を張り続けてさぁ」

 

 僕は戦い方を、体の動かし方を変える。

 ロボットのように決められた……完璧に近い戦い方で以て戦う。

 その癖を見抜くのは実に容易く、またそれを掌握して利用するのは実に容易かった。


「はい、揺らいだ」

 

 僕は口を開く。

 それだけで……ほんの一瞬彼らの動きが鈍る。攻撃の動きから、守りの動きへと全員が一斉に全員がほんのちょっとだけズレた状態で移行する。

 どうやらさっきの僕の言葉に対して、自分たちの中でも思っていたことがあるようだった。


「思ったよりも簡単に行けたわ」

 

 まさか舌戦で制せるとは思っていなかった想像以上に脆い子たちだったようだ。

 僕はまず手始めに一人の首を切り落とす。

 今まで手加減し続け、実力を測り間違えた彼は僕の攻撃に対応することが出来ない。


「ァ」

 

 いとも容易く一人目を殺し切ることが出来た。


「「「……ッ!?」」」


 一人居なくなれば完璧な連携など露へと消える。


「ァッ!」


「がっ」


「いっ……」

 

 僕は他の面々をそのまま実力によるゴリ押しですりつぶす。


「はい。終わり」

 

 もはや抵抗する術を何もかも失い、動けなかった最後の一人の心臓に僕は聖剣を突き刺して、終わらせる。

 

「……ッ!?」

 

 彼らを殺し終えた僕は……突如として感じた嫌な予感を前にして全力でこの場から飛び退く。

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