第45話
「……馬鹿なッ!?」
僕は叫ぶ。
つい先程前自分が立っていた場所に立っているたった一人の男を見て。
「ありえないッ!?なんでお前がここに居るんだッ!?ダグラスッ!?」
ジュピターン公爵家当主、ダグラス。
絶対にここに居てはいけない相手を前にした僕は動揺のままに叫んだ。
「何故何故何故!?……もうひとりの公爵家当主であるアークライトを捨て駒に……ッ!違う……マキナから逃げ切れる算段があった?自分たちの領を捨て、こっちの領に被害を与えるわけでも、なく?僕を?」
二人は絶対の信頼によって繋がっているのだろう。
公爵家の片割れをマキナの前へとあえて出すことで僕を油断させ、もうひとりが僕を狙う。
全ては僕を殺すため、領地を犠牲にさせ、もうひとりの公爵家当主を命の危険に晒した。
「俺は馬鹿だから詳しいことなど知らぬ。ただアークライトがお前を殺せば勝てると言ったであればそれが答えだ」
「……ッ!ぼ、僕はアークライトを過小評価していた、のか?自分の命すらチップにし、領を壊滅させることを選んでもなお……マキナはッ!いや、だめだ。もう遅いし、そもそもマキナじゃ気づけ無い……詰み?」
僕はあえて、聞こえやすいように自分の口で現状を説明する。
「……クソッ!」
僕は聖剣を構え、
「頭脳とはげに恐ろしいのだな」
「ぐぼっ!?」
だが、そんなもの無駄でしかなかった。
一瞬で僕との距離を詰めて腹に拳を一つ。
それだけで僕の体は吹き飛び、口から血が溢れ出してそのまま地面に倒れる。
死。
それが自分のすぐ目の前に迫っているという事実を否が応にも理解してしまう。
「嫌だ……ッ!死ねない……こんなところで死ぬなんてッ!無理だァ!僕はァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
僕は体をよじらせ、進み、少し離れたところに落ちてしまった聖剣へと手を伸ばして、手をつける。
「死ね」
ダグラスに油断はない。
一切の油断なく僕との距離を確実に歩いて詰めていく。警戒心を漂わせて。
ここでたとえ僕がなにかしてもすぐさま対応出来るよう……不意打ちにも対応できるようにするために一直線に僕の方へと突っ込まず、ゆっくりと歩いていることから、僕に対する警戒心は相当のものだろう。
「ごっぷ」
僕はそんなダグラスを……視界のかすれゆく瞳でにらみ続けた。
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