第37話

「さて、諸君。戦争の時間だ……防戦しか行わなかった我らは今、ようやく攻勢に出る。狙いはマーキュリー家。優秀な君たちであれば何の障害もなく勝利しうると僕は信じている。諸君。健闘を尽くせ」


「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

 

 停滞していた戦場の流れ。

 それを根底から覆すのはアースライト公爵家だ。


「……ふふふ。最期の仕上げと行こうか」

 

 勝利は僕の直ぐ側だ。


 ■■■■■

 

 今までただ防戦をするだけだったアースライト公爵家の軍勢がマーキュリー公爵家に対して攻勢に出た。


 攻撃を受けると思っていなかったマーキュリー公爵家の軍勢は敗走に敗走を重ねる。

 希少な飛行魔法を使って空を駆け抜ける精鋭部隊である青ノ軍が敵陣をかき乱し、赤ノ軍が全力の攻勢で持って敵を完膚なきまでに叩きのめす。

 

 そして、黒ノ軍によって街も村も全て焼かれる。

 男も子供も赤ん坊も殺され、売れそうな女と女のガキだけが生き残り、奴隷として売られる。


 既にアースライト公爵家の軍勢はマーキュリー公爵家にとっての最終防衛ラインであるマールスト川の渡河にも成功し、未だに快進撃を続けていた。

 


 そんな状況を他の公爵家が黙ってみているはずがない。

 兵士の数が少なくなり、がら空きとなったアースライト公爵領へと攻め入ろうとする他の公爵家たち。


 だがしかし、突如としてマーズレフト公爵家がヴィーナス公爵家が裏切り者であると断定し、ヴィーナス公爵家へと奇襲攻撃に出る。

 突然の奇襲にヴィーナス公爵家は混乱し、アースライト公爵家への攻勢だなどと言っている場合ではなくなる。


 そして、唯一攻勢の行えるダグラスの軍勢も徹底的なまでに構築された防衛拠点と頑強に抵抗する黄ノ軍と白ノ軍を前に一歩たりとも前に進むことが出来ていなかった。

 

 他の三公爵家は何も出来ず、ただただアースライト公爵家によってマーキュリー家が壊滅的な被害を出しているのを見届けることしか出来なかった。

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