第27話

 僕の方へと真っ直ぐに飛んでくるアークライト。

 彼の手にはいつの間にか巨大な漆黒の鎌が握られている。


「……ッ」


 僕の手に握られている聖剣とアークライトの手に握られている漆黒の鎌がぶつかり合う。

 その衝撃波でここら一帯に大きく亀裂が入る。


「ほう」


「ふん」

 

 僕は自分の足をアークライトの方へと伸ばし、顎を狙う。

 アークライトはほんの少し体をずらすことでそれを回避し、鎌を持っていないほうの腕で僕の足を掴む。


「『魔法術式 闇之章 第五節』」

 

 完全自己流の詠唱を呟くと同時にアークライトに掴まれていた僕の足が輝き、爆発する。

 その爆発によってアークライトは僕の足から手を離し、小さな火傷を負う。


「『魔法術式 闇之章 第三節』」

 

 僕の体が薄れ……アークライトの後方へと移る。


「……転移?」

 

 背後に周り、振るった僕の聖剣を鎌の持ち手で防ぎながら僕の魔法の内容に首を傾げる。

 

「……んっ」

 

「ふんッ!」

 

 人間と魔族。

 生まれ持った力の差はあまりにも大きい。

 アークライトは僕の聖剣を不安定な態勢であるにも関わらず、容易く鎌の持ち手で弾いて見せる。

 あっさりと弾かれた僕はそのまま壁へと叩きつけられる。


「おせぇ」

 

 一瞬で壁へと叩きつけられた僕の前に現れ、鎌を振るうアークライト。

 

「『魔法術式 闇之章 第三節』」

 

 僕の体が薄くなり、一瞬で僕の体は移動する。


「不思議な魔法だ。初めて聞く詠唱に初めて見る魔法だ」

 

「『魔法術式 闇之章 第四節』」

 

 自身のステータスを向上させる魔法の向上度数をすべて速度へと振り分けて、移動を開始する。

 お城から離れ、ただの赤い地面へと向かっていく。


「ァ!?逃げんのかよッ!オイッ!!!」

 

 アークライトは本来の目的を忘れて僕のことを追いかけてくる。


「『魔法術式 闇之章 第四節』」

 

 再度ステータス向上魔法の向上度数を自分が思う黄金比の振り分けに戻す。


「鬼ごっこは終わりか!?」


 その場に足を止めた僕の前へと足をつくアークライト。

 その瞬間。


「……ッ!?」

 

 予めセットしておいた魔法が発動し、アークライトの足に鎖が絡まりつく。


「『魔法術式 闇之章 第一節』」

 

 動きを止めたアークライトに対して、僕の発動した魔法が牙を剥いた。

 真っ白な閃光がアークライトの体を貫く。

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