第26話
「ふっ。やっぱり来たね」
アースライト領へと侵入し、進軍し続けるヴィーナス公爵家軍。
その対処をマキナへと任せて向かわせていた時。
「君は確か……」
ヴィーナス公爵家当主であるアークライトがアースライト公爵家の本拠地であるお城へと侵入していた。
「あぁ。そういえば僕は自己紹介していなかったね。僕はアル。見てわかる通りただの人間で……マキナの友達だよ」
流石は公爵家当主と言おうか。一切僕の監視網に引っかからずにここまでやってきたアークライトはやはり隔絶された実力者だろう。
だが、一体どこに現れるかを予測していた僕は彼の前に立ちふさがることが出来ていた。
「……なるほどね。理解したよ。マキナではなく君がアースライト家に吹いた新しい風か」
「うん。そうだね」
僕は笑顔でアークライトの言葉を肯定する。
「……っ」
あっさりと自身がアースライト家を操っていた参謀であると自白した僕にアークライトは若干の戸惑いの表情を浮かべる。
「だとしたら君にとってこの状況は最悪ではないか?自身の前にこの私がいるのだから」
アークライトは他の魔族とは一線を画す知能を覗かせる……すべてを見通さんばかりの視線が僕の方へと向けられる。
内心の恐怖を浮き上がらせるかのように。
「そんな……この程度の状況が最悪なわけないでしょう?」
「……」
だが、アークライトの視線に僕の恐怖の感情を見つけることができない。
「何か……策が?」
余裕綽々とした態度を通し続ける僕を見て、辺りを警戒するアークライト。
こんな状況であっても何か逆転できる可能性のあることと言えば僕以外の何かの……最悪の要因があることだ。
例えば他の公爵家が裏切った……とか。そんな可能性をアークライトは妄想させる。
そんな中、僕はそんな彼を見て小さくあざ笑う。
「たった一人。小さな侵入者が来たくらいで恐怖するやつがどれほどいる?」
不敵に僕はそんな言葉をアークライトへと投げかける。
「……どうやら」
魔族は実にプライドの高い種族である。
「随分と驕り高ぶっているようなだなァ!?アッ!?」
アークライトはあっさりと僕の挑発に乗り、胡散臭い笑みの下に浮かんでいる凶暴な本性を剥き出しにして僕のことを睨みつけてくる。
「ふっ。じゃあ、その見せかけだけの実力で僕の驕りを破ってみせてよ」
僕は腰に指している聖剣を抜き、内心の動揺と恐怖をおくびにも出さず、不敵な笑みを浮かべた。
「死ねェッ!劣等種がァ!!!」
アークライトが足をつけていた地面が消滅した。
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