第1話

「しゃっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!」

 

 僕はガッツポースを天へと掲げ、雄叫びを上げる。

 ファンの音が木霊する部屋の中、僕の前に置かれている光り輝くモニターに映っているGAME CLEARの文字。

 高校一年生の夏休みを捧げたゲームがようやくCLEARのできたのだ。


 オープンワールドRPGである『インキュナビラ』。

 グラフィックはきれいなのだが、シナリオは主人公である勇者が魔王を倒すという極シンプルなシナリオであり、そこに工夫などなくて、シナリオは短い。

 それ故にそこまでの注目を上げない

 

 だが、このゲームは主人公を自由に選択することが可能なのである。破格の性能を持つ勇者を選ばず、ヒロインや国王……果てには魔王までもを主人公としてプレイすることが出来るのである。

 魔王で魔王を倒すシナリオをやっているときは腹筋がよじれた。

  

 魔王と勇者以外を主人公に選んだときのゲームCLEAR難易度は鬼。

 一般プレイヤーは全力でお断りするようなゲームであった。 

 このゲームをプレイするのはやり込み厨の廃人どもだけであった。クソゲーマーを名乗る僕もその一人。

 

 今、僕がCLEARしたのゲームCLEAR難易度が最も高いちょっと特別な少年を主人公にした時のシナリオ。

 クソ雑魚で膨大な縛りを設けられているちょっと特別な少年でCLEARするのは本当に至難の技だった。

 

「ふんふんふーん」

 

 僕は気分良く掲示板である6chに、自分のゲームCLEARを自慢する投稿を行う。

 6chに生息している廃人たちは僕を称賛し、まったくもって不名誉な『時間の無駄使い王』という称号を贈ってくる。

 『時間の無駄使い王』の称号を持っている者はこれで12人目となる。


「ふー」

 

 リソースをすべてに注ぎ込んだせいで、高校の宿題は全くもって終わっていない。 

 これからは宿題を全力で終わらせに行かなければならない。……あぁ。面倒。


「んしょ……」

 

 僕はゲーミングチェアから立ち上がり……長い間飲んでいなかった水を飲むため、ウォーターサーバーの方へと向かおうとした時。

 視界が眩み……僕は倒れてしまう。

 

「……ぁ」

 

 意識がゆらぎ、視界が暗く染まって行く。思考が歪み、何も考えられなくなっていく……きもち、悪い……。

 そういえばずっと寝てないや……気絶しちゃ……た……。

 

 ■■■■■


『昨夜未明。自室にて倒れ、死亡が確認された少年……現在死因を特定しているところで……続いてのニュースです』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る