第8話
「驚かせてすまんな、丁度話が聞こえたのでな。それで談吾、お主は帝国に行きたいのか?」
「あえて帝国に行きたい訳ではないです。
しかしオレが王国に居る事で迷惑をかけたくないのです。何も分からないオレに対し親切にしてくれたアルフォート様が困るようなら帝国に行く事に抵抗はありません。」
オレは転生者前にアルフォート様達のように親切にしてくれる方はいなかった。
もちろんアルフォート様もオレが転生者と分かりプラスになると思いオレを助けてくれたのかもしれない、それに神災を避ける為に転生者を無下に出来ないだけかもしれない。
それでもここまで親切にしてくれた人が不利益になるような事がオレのせいで起きるかもしれないならそれは嫌だった。
「まぁ落ち着け談吾。もし談吾が王国が嫌で帝国に行きたいのならワシは止めないしなんなら帝国まで案内もする、しかし嫌でないならこのまま王国にいて欲しい。」
「それは王国の発展のためですか?」
オレは少し意地悪な答えを返した。
するとアルフォート様は苦笑いを浮かべて
「確かに転生者は国を発展させるのに大切な存在だ、しかしそれ以前にワシはお主が人として気に入ったのだ。」
「ワシは転生者を直接見るは始めてだし詳しくは書物や話で知った事しかない、その中に出てくる転生者はとても曲者が多い、自分の能力に溺れ暴れ回る者、国が下手に出る事をいい事に好き勝手に過ごす者、それこそ勇者や魔王と言われる存在になる者もおって、正直ワシは転生者を人として見れる自信がなかった。」
「しかし知らぬ土地で知らぬ人のワシたちに声をかけてきた時の表情は不安と遠慮が強く感じられた。それでもお主は丁寧な対応をし拘束される事にも抵抗しなかった。そこに談吾の良い人間性を感じ話をしてみた結果、お主を気に入ったのだ」
「だからこそワシは談吾の意思を尊重した上で何とかこのまま王国に出来ればこのアルフォート領いて欲しいと思っておるのだ。」
オレは気付くと涙が流れていた。
アルフォート様の真っ直ぐな気持ちが心に響いたのだろう。正直オレ自身なぜ泣いているかわからなかった。
「そのっ……急にすみません。
オレはあまり人からそう言った暖かい言葉を貰った事がなかったので……」
オレの転生者前の人生は常に灰色だった。
生まれてすぐに母は過労で死んだ、父はろくでなしで働かず妊娠中にも関わらず母は代わりにずっと1人て働いていて過労で倒れ病院に運ばれたが何とかオレを産んですぐに亡くなったそうだ。その後父が生まれたばかりのオレを育てるなどある筈もなく父は失踪した。
病院に置き去りにされたオレは施設に入れられ中学を卒業するまでその施設で育った。
中学卒業後は高校には行かず工場で働き始めたがそれが失敗だったオレが働いていると何処からか知った父がオレに金をたかりに来たのだそこからは酷かった。
オレの仕事先は父の事を信用し給料は全て父に渡してしまったのだ、もちろんオレは仕事先に説明をしたが未成年のオレよりも父親の方が信頼があるのが当然でオレが18歳までそれは続き最後はオレの名前であちこちで多額の借金をしてまた父は失踪、さらに父はオレが働いていた工場の事務所からもお金を盗んでおりオレは首になった。
その後、オレは借金を返す為に仕事を探したが中卒で借金持ちのオレを雇うのはブラック企業位でそこからは安い給料でこき使われ18年かけ借金を返済して会社を辞めた所で…転生者となった。
そのためオレは人からの善意などの暖かい気持ちなどに触れる事なく毎日灰色の世界で生きてきた。
オレは気が付くと転生者前の話をアルフォート様とバースさんに話していた。
話を全て聞くとアルフォート様何も言わずにオレを抱きしめてくれた。
この時がオレは何があってもここに残り恩返しをしようと覚悟を決めた瞬間だった。
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「申し訳ありませんでした。突然泣き出ししかもアルフォート様のお手を煩わせるてしまいました。」
オレは気恥しさと申し訳なさで頭の中はグルグルしていた。
「転生者とて人だ、しかも前世の記憶まで持っていては色々な感情もあろう。それにお主は苦労をしたのだ。あくまで他人のワシが偉そうな事は言えんだがな、これは苦労をしたお主への褒美と思うのだ。お主には能力があり人の痛みがわかるよい心を持っておる。
それらを使えばこの世界なら楽しく暮らせるだろう。第2の人生を存分に謳歌できる!
それにな何か困った事があるならワシも手を貸す!なんなら丁度良く歳も離れておるワシの事を親戚のおじとでも思ってくれても良い。」
「ありがとうございます。オレは他の国や他の貴族の方を知りませんが、オレが出会った方がアルフォート様で本当に良かったと思っております。なので先程の言葉は撤回致します。オレ、御手洗 談吾はアルフォート様の元でブルベン王国の転生者として国が発展出来るように頑張りたいと思います。
なので改めてよろしくお願い致します。」
オレはアルフォート様の前で膝を着き頭を下げた。
「承知した!改めてこのブルベン王国をよりよくする為にお主の力をワシに貸してくれ!またお主はこのアルフォート・グランデが責任を持って庇護する事を誓おう!」
こうして思わぬ形ではあったがオレはブルベン王国の転生者としてアルフォート様の庇護下で活動する事が正式に決まった。
ちなみにこの時一緒にいたバースさんはこの時の出来事を城中の者に話したのだが色々とズレた話で伝わってしまい。
オレはアルフォート様の養子になると思われてしまった、しかもそれをアルフォート様も面白がり否定しない為に次にルマンドさんやシルにあった時に若様と言われた時はやっぱり帝国に行こうかと本気で一瞬思ってしまった。
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