第26話 如月さんの親公認恋人大作戦 その2

挨拶もそこそこに、早速小生は庭に行った。

そこには確かに小生が見たことのない桃源郷があった。


「うおおおおお!!!」

小生は未知なる食べ物に思わず雄たけびを上げてしまった…


「…何か待ちきれないようだから…食べていいよ…」

如月さんのお父さんが少しひいていた感じもしたが、

小生はその合図と共に一斉に食べ始めた。


バグバグバグバグバグ!!!

「こ、こんな味は初めてでござる!!!

 これは…見た目よりもジューシーでござるな!!!

 む!これはちょっと辛いでござる!!!でも上手い!!!

 これは匂いがたまらんでござる!!!」


「こちら…ムール貝をベースにした

 オーソドックスなスペインのパエリアでございます。」

「こちらは…ブラジルのシェラスコをベースに

 魚料理を少しアレンジしたオリジナル創作でございます。」


「うおおおおお!!!旨いでござる!!!」


「こ…こちら…」

「くっ…料理が…」


最初は余裕を持って調理していたシェフ達も

勝の凄まじい食欲の前で、だんだんと料理の数が心許なくなり…

途中から競争のような形となっていた。


「まあ…こんなにも喜んで下さるなんて…おもてなしのし甲斐があるというもの…」

「さ…流石旦那様です…

 料理人たちがあんなに一生懸命に料理するの初めて見ました…」


・・・


「ふぅ~~~お腹いっぱいでござる!!!

 全ての料理が美味しくて…大満足でござる!!!」


「…あははは…ここまで豪快に食べてくれると逆に清々しいね!

 ちょっとしたフードバトルを見た気分だったよ!」


シェフ達はほぼ力尽きていた…

「こ…光栄…です…」


「あ~、ごほん。

 では改めて、桐生君…あの時娘を助けてくれて

 本当にどうもありがとう!」


改めて如月さんのお父さんは頭を下げてきた。


「とんでもないでござる…

 実はあの時は…」


小生はあの時起こったことを知りうる限り説明した。

・小生があの場に行ったのは幼馴染みであるなっちゃんを追いかけたためである事

・その場で怒りのままに男達を倒してしまったため、あまり記憶がない事

・その場にいた女の子達が如月さんだと分かったのはつい最近の事


如月さんのお父さんとお母さんは黙って聞いてくれた…


「そうだったのか…

 あの時被害に遭っていた女の子全員が同じ学校に…

 確かに遥が言う様に…運命を感じてしまうな…」


「…娘は…あの事件の後…すっかり塞ぎ込んでしまって…

 でも…少しずつ明るくなっていき…

 最近は凄く楽しそうに学校に行くんです…

 それは…貴方のおかげだったんですね…

 親としてはちょっと複雑な所もあるけど…

 どうか娘の事も宜しくお願いしますね…」


お二人は少し複雑そうな顔をしつつも、小生に如月さんの事をお願いしてきた…


「さあ、旦那様、私の部屋に行きましょう♪」


「え?…如月さんの部屋にでござるか?」


「そうですよ?」


「…小生…女の子の部屋に行くの初めてでござるから…

 き、緊張するでござる…」


「え?そうなんですか?

 成瀬さんのお部屋はてっきりあるのかと…」


「小学校低学年の時はあるでござるが…

 なっちゃんとは暫く疎遠でござったから…(苦笑)」


「…では旦那様が異性を意識して入る初めての女性の部屋が

 私の部屋って事なんですね?嬉しいです♡」


・・・


ガチャ

「さあ…旦那様…どうぞ♡」


「こ…これが如月さんの部屋でござるか…」


薄い水色で統一された壁紙、可愛らしい飾りつけ、大きな熊のぬいぐるみと

全体的に可愛らしい如月さんの雰囲気そのもののお部屋でござった。


「クッションをと思ったのですが…旦那様には小さすぎて意味がなさそうです…

 どうしましょう…」


「小生立っているから大丈夫でござるよ?」


「う~~~ん…そんなわけには…

 そうだ…ベッドに座って下さい!!」


「な、何を言っているでござるか!!

 そんな事言ってはいけないでござる!!!」

小生は顔が熱くなってしまった。


「そんな遠慮なさらずに…どうか…うんしょ!」


如月さんは思いっきり小生を引っ張った。


「いや…いや…そんなのダメでござる…」


「そ…そんな事言わずに…助けると思って…」


「別に助けとか関係ないでござる!!!」


そんな押し問答を続けていると

急にドアが開いて…


ワン!!!


あの時小生が踏んでしまったうんちの犯人…いや犯犬である

ゴールデンリトリバーが小生めがけて飛び込んできた


「きゃあ!」


「如月さん!」


小生はバランスが崩れ転びそうになった如月さんを庇って

ベッドにダイブしてしまった。


如月さんの顔が小生の顔のすぐ近くに…

お互いの息づかいが分かる…


「だ…旦那様…」

「き…如月…さん…」

何だかとてもドキドキする…

如月さんが目を瞑り…小生の… という所で…


「な、何やってんだ!!!

 まだそこまで認めてない!!!」

騒ぎを聞きつけたお父さんの雷が落ちるのであった…





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る