抱き合い方なら知っている

麗奈の話①

「よかったよ」


「麗奈ちゃん、付き合うのは…」


「あー、もうつまんない事言わないでよ!いつかだよ!いつか」


私、白石麗奈しらいしれいなは、セフレである内藤和人ないとうかずとに終わった後、いつもこう言われるのだった。


正直、私は恋は体でするものだと思っている。


和人は、私の五個下だ!


私は、ただいま38歳!


結婚も出産も興味がない。


だから、付き合うとかって明確なルールも私にはいらない。


和人は、今の私のNo.1だ!


和人は、複雑な表情を私に向ける。


「俺、33だよ」


「知ってる」


「結婚も子供も、俺も興味ないよ。だけど、彼女は欲しい」


私は、驚いた顔をした。


「デートしたいんだよ。毎回、ラブホか麗奈ちゃんの家だろ?正直、嫌だよ」


「そっか、じゃあ仕方ないね」


「麗奈ちゃん」


「もう少しで、和人を好きになれる気がしたけど…。仕方ないよね」


「もう少しって、もう3年だよ」


「じゃあ、またやりたくなったら呼んでよね」


「麗奈ちゃん、そんな言い方ないよね…」


「どういう意味?」


「嫌、いいんだ。わかったよ」


「終わりにしたいって事でしょ?そういう意味だよね?和人」


「どうして、そんな簡単に言うんだよ」


何で、和人が泣くの?


「終わりにしたいって意味でしょ?じゃあ、仕方ないよ」


「仕方ない、仕方ないって何なんだよ」


何で、和人が苦しそうなの?


「だって、それ以外に言い方ないよね!この関係が嫌なら仕方ないじゃん」


「麗奈ちゃんにとって、俺は玩具と変わらないんだよね!気持ちよかったら、それでいいんだよね!俺の、価値なんてそんなもんなんだよね」


和人の言葉に、心臓がドキッとした。


私、和人にあの日の私と同じ気持ちを抱えさせてる。


「和人、何で泣いてるの?私を好きなの?」


「別に、何でもない」


好きって言ったら、負ける気がしてるんでしょ?


「もう少し、続けようよ」


「嫌だよ!もう、充分続けたんだ」


わかるよ!


もう、充分苦しんだんだよね。


「もう、会わなくていいよ」


「待って、和人」


立ち上がろうとした和人の腕を掴んで引き寄せた。


「何?」


「今日だけ一緒に居て」


「何で?」


「お願いだから」


「どうして?」


「今日だけは、一人でいたくないの」


「わかった。泊まってく」


和人は、そう言って後ろから抱き締めた私の手を握りしめた。


私ね、和人の傷つけ方は凄く知ってるよ!


だってね、そこは私が通ってきた場所みちだから…。


私は、私の傷を和人につけたかったのかな?


あの日の私みたいに、純粋に好きだって伝わったから…。



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