第12話二度目の夏、調理の夏
あっという間にタイムリープして二度目の夏が来ました。
そして二度目の夏休みの勉強会が本人の同意も無く開催されることになりました。
おかしいなー、去年は無理矢理働かされることになりかけた俺をお母さまがお怒りになって守ってくれたはずなんだが、今年は無償で貸し出された。
おかしいなー、家に高級そうめんやビールがダースであるのはおかしいなー。
少しだけイラっとしたので、その内そうめんもビールも料理に使ってやろう。原型は留めてないけど美味しいことは確実だよー。
「貴君大丈夫―?」
ボーとしている名前を呼ばれてハッと意識が覚醒する。いかんいかん熱せられたフライパンの前で意識が飛んでいた。
長時間フライパン使用は子供にはきつかったみたいだ。取れるうちに自家製スポーツドリンクを飲む。作り方は簡単なのでググってくれ。レモンを少し入れるのが未来の私流だ。
「いいな~私にもちょうだい」
「あ、わたしもお願い」
「はいはい」
仕方なくコップを取り出し注いで、緑さんと、真津美さんに渡した。
緑さんと、真津美さん、覚えているかな?今年まで登下校を引率してくれたピチピチの中学一年生だ。残念ながら今は制服ではない。チッ。
コクコクと飲んでいる二人は俺に勉強を教えに乞うてきた。中学生になり英語の授業が始まり戸惑っていたらしい。今のところはそう難しくないので問題ないが今後が不安で俺の所に来たと。
確かに今の俺は簡単な会話までは出来るぐらいに英語が出来る。
いやー子供の脳は凄いね。自分でも異常と思えるぐらい知識が増えていく感覚がある。子供のうちに脳を鍛えるのは良いという未来知識は間違っていなかったようだ。
小学二年生に教えを乞うのは年上として問題なのではと聞いてみたら。
「え、小学二年生?」
「外見は子供、中身は大人じゃないの?」
というありがたい言葉をいただいた。真津美さん、危うく未来の人気漫画の名ゼリフを言いかけてましたよ。同じタイムリープ者ですか?
お世話になったので同級生の間に入って受けれるならオッケーと言ったら迷わずお二人は来ましたよ。
「はいはい、手元がおろそかになってますよ~。俺が昼食を作り終わるまでに終わらなかったらその曲を小学生の前で振り付きで歌ってもらいますからね」
ヒイィィと悲鳴を上げて問題に取り組む二人。ちょっと昔の英語の曲を訳してもらっている最中だ。
ちなみに訳させているのはゴ〇イゴの有名な英語の曲だ。よくカラオケで歌ってたよなー。
ボーカルの方が英語の曲を聞いていたら話せるようになったとか言っていたので曲をお借りしたのだ。
『辞書を使用していいんですから、手が止まることはないはずです。昼食も抜きにしますか?』
英語で話してみる。
「何言ってるかわからないけど絶対、私達に良くないことを言ってる気がする」
「鬼―!」
『未来の子供たちは小学生の時から英語を学んでいるんです。中学生ならもっと頑張ってください』
さて中学生に発破をかけたとこで料理に戻ろうか。
自分と天宮の弁当を作っていたのが同級生達(全て女子、男子はいずこぉーっ!)にバレてみんなの分まで作ることになった。
流石に毎日作るのは無理なので週に一度だけ家庭科室を使用して簡単なもの作ることになった。
俺、まだ小学二年生なんだが。
今日はクレープを作っている。甘いのではなく、しっかり昼食として食べれるやつだ。
幸い有志の方から食材を大量にいただいたので困ることは無い。
俺が朝のランニング中に仲良くなった農家の人達と漁業の人達からいただいたのだが、なんか微妙に心が納得してないのはなんだろ?俺が得してないからか?
よし、やっとクレープ生地が焼き終わった。二十五名(増えてるぅ!)プラス教員プラス中学生の分の量はなかなかの量だ。乾かないように処理しておく。電子レンジがあればすごく楽に作れたのだがこの時代の電子レンジはブレーカーを簡単に落とすので許可が出なかった。俺もあんなバカでかい古い電子レンジは使いたくなかったので別に良かったが。
次はタレでも作ろうかな。
「ねえちょっと聞きたいことが」
「なんです?」
「あの角で落ち込みながら野菜を切っている先生はなに?」
「ああ、あれは小学生ばかりに負担を負わせて楽している香山先生に怒った教頭先生が調理補助によこしてくれたんです。ですが料理も出来ないダメっぷり、しょうがないので基本のキャベツの千切りをさせています」
本当なら教室で掛け算を教えていたはずなのだ。
掛け算は反復で覚えるので俺はあまり役に立たない。香山先生にまかせて俺は調理に入ることになった。家庭科室は先生がいないと使用できないので仲のいい教頭先生に頼みにいったら、教頭先生が怒った。生徒に負担をかけて担任が楽をするなと。
勉強会も負担だと言ったら目をそらされたが。
教頭先生が授業を受け持ち、香山先生は俺の所にドナドナされることになったのだ。
「と、いうわけで何も手伝えない香山先生は切る練習をしています。花嫁修業になってよかったですね。おや?もっと細く切らないとだめですよ、それではざく切りです。あと一玉まるごと切らないと時間かかりますよ」
「むーりーもうむーりー!」
おや?香山先生が壊れたかな?しょうがないな~。
「緑さん真津美さん。後で教えますのでこちらを手伝ってもらえますか」
勉強よりもこちらの方がいいと考えたのか二人はすぐに来てくれる。
スライサーと大きめのボウルを用意します。一人はスライサー持ってください。もう一人はキャベツをお持ちください。キャベツをスライサーに押し付けて下さい。
ほら下に置いてあるボウルの中に細くて綺麗な千切りキャベツがたくさん。
呆然としないでください香山先生。
何もできない香山先生はツナ缶を買ってきてください。少し昼食を豪華にしましょう。
領収書?自費です自費。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます