第三章 麗しき日々!?
第14話
話してみても要領を得ない。晶はそう思ったが、話せた事には大いに満足した。それになんとなく、理屈を理解するよりも感覚的に慣れていくのが一番の理解になるような気がした。
正午にかかったばかりの窓辺で、小鬼はしばらく漫画を読んでいるつもりらしく、本棚から二巻と三巻を取り寄せると重ねて側に置いた。
階下からは晶の父と祖母が買い物に行くかと呼びかけている。天春家の土曜日は、買い物をしてからラーメン屋か蕎麦屋で昼食を取る事が多い。
晶は小鬼に、一緒に行くか聞いてみた。小鬼はキョロキョロして床に落ちていた団扇を拾うと、漫画の間に挟んで晶の肩にフワリと飛んできた。
在るものをしおり代わりにするとは、なんて頭がいいんだ。晶は階段を下りながら感心した。
小鬼と一緒に父の運転する車に乗り込むと、しばらくして父は皆に暑いから窓を開けろと言い出した。後部座席が温まりきっていると言う。見えないながらも温度の変化や発生源に気づく父の感性に、晶は尊敬を覚えた。
秋の訪れを感じさせる空気が窓から流れ込み、車内が一気に爽やかになると、理太郎(晶の父)はラジオを点けた。毎週聴いているFMの番組から、土曜日の声がする。
行く場所は大体決まっていて、今日も隣町にある市場のようなスーパーへ向かっている。父は近所の人と出会すのを避ける為、近くのスーパーにはほとんど行かない。
そのうち、そういう父親の感覚が自分たちの感覚みたいになって、晶と華子(姉)も隣町の方が伸び伸びと過ごせると思うようになっていた。
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