モブおっさんは傍観者を気取りたい。

翔馬

第一羽 おっさん、追放される。

「あんた、もう出ていけよ」

「…は?」

「役立たずのあんたの世話になることはもう何一つないからさ」


三年間面倒を見ていた、パーティのリーダーにまで成長した少年が俺に放った最後の言葉だった。

最初は右も左もわからないといった危なっかしい様子だったが今では、メンバーを庇う余裕すら見せるようになったのだから当然かもしれない。

役立たずと言われたことは不本意だが。

確かにはじめの頃は何でも教えてやることがたくさんあったのだが物覚えの良い少年はあっという間に教えたことを吸収し、しかもさらに発展させていった。

討伐中の警戒の仕方や調査のいろはから果ては料理や夜営の支度まで、何でもござれである。剣技のセンスもあり俺になど全く負けなくなった。

中でも魔法に関してなどはもとから俺よりはるかに魔力があった。基礎の初級魔法ですらバカみたいな威力があるのだ。

そう、確かに俺の役割はこのパーティ内では皆無に等しい。

少年リーダーは魔法剣士で俺は劣化版みたいなただの剣士だ。

斥候役のシーフも、後衛役の魔法使いも、盾役の重戦士も、治癒が得意な神官も他のメンバーがいる。彼女たちなら彼の癒しにだってなる。

確かに俺は役立たずだった。せいぜい荷物持ち程度の。夜営の見張りができるくらいの。そんなもんになり下がっていたんだ。


「あー…そうだな俺はもう要らない、か」

「今までご苦労様でした」

「今月分のお給料は振り込んどいたのー」

「手合わせすることももう無いだろう」

「まあ、お元気で」

「はあ」


パーティメンバーは一言ずつ告げたあとは振り返りもせずに去っていった。

俺はしばし街道の真ん中で呆然としていたが、ゆっくりとメンバーが向かった方と反対側へ足を動かした。

たった今ゴブリンの集落を潰したあとの薄汚れ疲れきった体を重い足をどうにか引きずって、拠点としていた街から離れるように。


ショックがなかったわけではないがイメージしたほどのダメージはなかった。

文字通りこれ以上俺があいつらにしてやれることなど無いくらい、やりきったという達成感のようなものがあったからかもしれない。

剣も魔力も並の俺がとある村の生き残りの少年を拾って育てるなんて、まるでファンタジーのようで。

あっという間に強くなった少年が俺を追い抜いても、大きくなったと感心こそすれど嫉妬などは湧かなかった。

思えばどこかゲームのストーリーをなぞっているような感覚で。

次々に女性冒険者が集まり少年を囲む様子はラノベでよくあるチーレムっぽいなあ…って。


…、……………おやぁ?

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