第7話 TOMORROW (翌日)

 翌日。


 俺はまたしても立ちんぼをやっていた。なんとなく女子と仲良くなれるんじゃないか、なれたらいいな、きっとなれる、いや無理か、という思考たちがグルグルして、結局立ちんぼを遂行した。


「あ!」

「うげっ」


 指を指して「あ」と言ったのはその女。嗚咽を漏らしたのは俺。これが昨日の出来事に起因することは言うまでもない。


「ねえ、友達になってくんない?」

「まだ言うか」

「だって、友達いないんだもん。この辺の女ってどうせヤリモクでしょ? そういうのとは付き合いたくないし」

「昨日と言ってることが違うじゃねえか!」

「偶然通っただけ。あそこの松屋に行こうと思って、ここが近かったから」


 周りのヤリモクであろう方々からの視線が痛い。


「もしかして、親がどうたらこうたらっていうあれも嘘か?」

「んー、親がウザイってのは間違いないわね。それ以上でもそれ以下でもない」

「逃げてきたとか言ってたよな」

「ああ、それ嘘。一人暮らし」

「てめぇ!」

「友達になって?」

「こ●すぞ」


 そうして俺はこの嘘つき女を蹴飛ばして排除した。それを横に立っていた女の子が見て、舌打ちしてきた。


 *


 さらに翌日。


 俺はまたしても立ちんぼをすべく、昨日と同じ場所に向かっている。


「うげ!」「やっほー」


 嗚咽は俺の反応、勝手に喜んでるほうは例の女だ。


「どけよ」

「なんで」

「ここで立ちんぼするって決めてんだよ。邪魔するな」

「んじゃ友達になってよ」

「なんでそうまでして俺と友達になりたいんだよ。他を当たればいいだろ?」

「女子には何回もアタックしたんだけど、だーれも友達になってくれなくて。1回男に声かけたら、最悪、ヤられた。あんたは2回目なのね。で、臆病にもヤらなかったから合格。まだ私と友達になれるチャンスは残ってるわよ?」

「それは挑発と受け取っていいのか?」

「友達になってください、っていうお願い」

「人にものを頼むときは、敬語を使うべきだ」

「だから言ってるじゃない、友達になってください、って」

「はぁ」


 このままだと、明日も明後日もそのまた次の日もこの女に付きまとわれる。どうすべきか。


「やばっ」


 唐突に、彼女は逃げた。


「おい!」


 なぜ逃げたのか? そんなの知るか。何から逃げたのか? 少なくとも俺からじゃない。

 周囲を見渡すと、やはり立ちんぼ女子とそれを喰らう男たちしかいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る