16,いいこと思いついちゃった!
「お兄ちゃん、今日もお迎えに来てくれたの? 寒いのにいつもごめんね。ありがとう」
「ぶふぉー!! いいんだよ!! これが僕の生き甲斐だからいいんだよ!! そんな良い子の雪姫たんにはココアをあげよう。ちょっと冷めちゃったけど、ごめんよ」
「うわあ、ありがとう! でも下校中に飲食しちゃダメって、先生から言われてるの」
「あぁおっ!! どこまで良い子なんだ雪姫たん!! 僕なんか小学生の頃は駄菓子屋でチェリオとブタメンを買い食いしていたというのに!!」
近所に住む綺羅星お兄ちゃんは、私が怖い人にさらわれないように、夏の暑い日も、冬の大雪の日も、学校がある日は毎日お迎えに来てくれる。朝はアリスお姉ちゃんと一緒に登校するから、本当に心強い。
綺羅星お兄ちゃんとアリスお姉ちゃんはいつもけんかばかりしてるけど、お互い素直になれないだけで、仲良くしてあげてもいいけど? くらいには心の奥底で思い合っているはず。でも意地っ張りなふたりだから、誰かにそれを言われてしまったらおへそを曲げて、いい方向には進まない。私がふたりのクッションになって絶妙な距離感を保っていれば、それでいいんだと思う。きっと、これからも、ずっと。
フリースのポケットから出してくれた缶入りココアを手に収めた感触はお兄ちゃんの言う通り、ほっとやさしい温かさだった。
「そうなんだっ。でもね、きっと駄菓子屋さんのおばあちゃん、お兄ちゃんがお店に来てくれて嬉しかったと思う」
「んおおっ!! ルールに縛られない良識も持ち併せているなんて、もはや雪姫たんは姫を超越した女神!! 女神降臨キターアアアアアア!!」
小学校からお家へ帰る途中、海へ続く道路の片隅に、何年か前まで、昔を舞台にしたドラマで見るような、小さな小さな駄菓子屋さんがあった。お店を畳んでからもしばらくの間は古いチェリオの自動販売機が閉め切ったシャッターの前で独り頑張っていたけれど、それもいつの間にか姿を消して、とうとうお店を兼ねた
お店のおばあちゃんは腰が曲がっていてあまり身動きはできず、言葉遣いは少し荒っぽかった。お店にはあまり行ったことがないから、私が覚えているのはそれくらい。ようやく手が届く高さに掛けられたベニヤ板の棚に置いてあるライフルのようなエアガンは男の子たちの憧れで、しかしお小遣いを貯めてもなかなか手に入れられず、それを収めたパッケージは色褪せ、ホコリを被っていた。
まだ小学生の私にも、こうして少しずつ、懐かしいなと言える思い出ができるのかなと、最近感じるようになった。
でも綺羅星お兄ちゃんやアリスお姉ちゃんとの楽しい毎日は、ずっと続いてほしいな。
そうだ! いいこと思いついちゃった!
明日で二学期が終わり、冬休みに入る。自由な時間がたっぷりできるから、思い切って挑戦してみよう。
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