9,オタクの琴線に触れる
「ミッションコンプリイイイイイイト!! それに比べて御伽野アリス!! 抱き枕カバーをオールコンプリートした功績は称えるがキサマ、同人誌はどうした!!」
「高報酬のものを優先的にゲットするのは当たり前でしょ」
「だからといって同人誌を一冊もゲットしないとは何事だ!? キサマは仕事をナメているのか!?」
「ニートのアンタに言われたくないわよ」
逆三角形の建物の軒下、コンビニとカフェチェーンのある空中通路には、戦を終えた数百人が座り込んでいる。そこにやたら大きく響き渡るニートの罵声は、その他大勢の注目の的となっていた。
「うるさあああい!! 学生の分際で就労しないボクのアイデンティティーなど理解できまい!! まぁそれはさておきだ、地方発送の品は全部ボクが担当して正解だったよ」
「地方発送? 転売でもするの?」
そのとき、ニート綺羅星の表情に陰りが見えた。
「キサマ、いま、なんと言った?」
「転売でも、するの?」
「て、ん、ば、い? 転売だと? キサマアアアアアア!! このボクが、このボクが転売などするとでも思っているのかこのオンツァゲス!!」
「オンツァゲス?」
「いいかキサマ、キサマはいま、ボクのオタプライドを著しく傷付けた! よって説教&報酬半額カットだ! 今回は初回だから半額で勘弁してやる。次にこのような発言をしたら訴訟を起こしてやる!!」
「半額!? アンタ私がどんだけつらい思いをして枕ゲットしたかわかってんの? このクソ暑いなか男どもに混じって汗と汗を擦り付けて照り焼きになりながらやっとゲットしたのよ!?」
「そんなのわかっとるわああああああ!! その苦労をも台無しにするほどの失言をキサマはしたのだ! いまから親切なボクがそれを具体的に教えてやるから、耳カスをくまなく掃除してよーく聞け!」
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