霊戦記

やまぶき

第一の巻

霊堂俊介は生死の狭間にいた。


「(俺、死ぬのかな)」






7月24日。世の中はすっかり夏休みブーム。


俊介も例外ではなく、高校の友人数名と肝試しに行こうということになり、その日の夜早速現地へと足を運んだ。


場所は市内でも有名な心霊スポット。

     "猫蝕トンネル"

様々な噂が後を絶たず、幽霊の目撃情報も数多く溢れていた。


そんな心霊スポットに肝試しに向かった俊介は嫌な予感。悪寒を感じ取っていた。


俊介は生まれつき霊感が強い方である。

はっきりとではないが今までも人ではないものは何度か目撃したことはあった。


だが今回は違う。何かいる。

それをハッキリと認識できるほど強い念を感じていたのだ。


そんなことを思っていた矢先、トンネルの後ろ側で何か物音がした。

その場にいた全員が後ろを振り返った。


その時、皆はある"噂"を思い出した。


トンネル内では絶対に振り返ってはいけない。

もし振り返ってしまったら"御門様"が怒ってしまう。


俊介とその友人達はその目でハッキリと見た。


手が異様に長く、足が異様な曲り方をしている人影を。


その場の全員が恐怖という感情を思い出す間もなく皆が微かに聞こえるような声で


「殺しちゃうねぇぇぇえ」


俊介は一瞬で友人の方向へ振り返った。

遅かった。友人全員の顔と四肢がもがれ、死んだことにすら気づいていない表情が宙を舞っていたのだ。


「次は君だよぉぉぉお?」


人のものとは思えない声でソレは告げてきた。


「(俺、死ぬのかな)」


一瞬にして死を悟った俊介は刹那、トンネルの入り口付近で3人の声を聞き取った。


「死者はオレがやる。生存者の救出。それが任務だ。」


「了解」 「了解でーす」


その声の主は瞬きをする間もなく目の前に姿を現した。


年齢は俊介と同い年ぐらいの男女二人組。


俊介が状況を把握しきれていない時声を掛けてきた。


「君死なないでよ。私たちの任務が達成できなくなるから」


「今は敵に集中しろ。」


俊介は咄嗟に


「お前たちは誰なんだ!!」


すると


「お前たちとは失礼ね!!!」


「そういえばまだ名を名乗ってなかったな。」


   「俺たちは」  「私たちは」



        



        『霊戦士』













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