声フェチは願望を叶えたい
イコ
第1話 あの子の声を
最新音声変換アプリの内容に僕は何度も説明を読み返した。
「好きな声を1分以上録音できれば、言ってほしい言葉に変換できる?」
テレビなどで、昔の歌手の人を再現させて歌っているのを見たことがある。
それが音声アプリになって自分が使えるとは思ってもいなかった。
僕は昔から声フェチだ!
幼稚園の先生
近所に住む幼馴染のお姉さん
小学校の同級生のお母さん
中学の教育実習の女子大生
大好きな声優さんの話をすれば夜通し話が出来るほどだ。
そんな僕が最近一番好きな声を見つけてしまった。
彼女はクラスで一番人気があるS級美女。
僕は彼女の声に惚れてしまった。
だけど、陰キャでまともに他人と挨拶も出来ない。
ましてや、彼女に挨拶してをしてもらったことすらない。
もしも、このアプリに彼女の声を録音できたなら、毎朝彼女の声で目覚めることができてしまう。
彼女から【おはよう】って言ってもらえるんだ。
本当に使える物なのか、検証がいるため、姉が友人と電話で話している声を一分間録音してみた。
録音したデータを早速変換して【おはよう。元気?】としてみた。
イヤホン越しに姉の声で【おはよう。元気?】と挨拶される。
「出来た!!!」
これは本当に使える……僕は悩みに悩んで一大決心をした。
「彼女の声を録音するぞ!!!」
しかし、なかなか上手くいかない。
まず、困ったのは1分という壁だ。
彼女が友達と挨拶をしているときに録音しようとしても、録音時間が短いため採用できませんと言われてしまう。
会話とは彼女が一方的に話すだけじゃない。
姉さんのときのように姉さんだけの声が聞こえていれば問題ないのに、君島さんの声を録音しようとすると、どうしても他の女子の声も混ざってしまう。
それでは複合された変な女子の声が出来上がって聴き応えがない声になってしまった。
何よりも、彼女が友達と話している間。
陰キャな僕が側にいると、陽キャラ集団に囲まれている彼女に近づけばどうしても目立ってしまう。
それも近くでスマホを操作していれば怪しいと思われるかもしれない。
ビビった俺は1分間の録音が出来ないでいた。
……天は僕に味方した。
授業の一つで一ヶ月に一度、席順で回ってくる現代文の朗読。
この時間が僕は一番嫌いだった。
だって声を出すのが恥ずかしいのに、それを強制的にやらせるのだ。
だけど、今回は違う。
彼女の番になるのを待つ時間はもどかしくもあり、待ち遠しい楽しい時間だった。
そして、ついにそのときはやってきた。
「君島、読んでくれ」
「はい。バグダットの靴磨き」
彼女が【バグダットの靴磨き】という小説を朗読する。
その声を聞いているだけ、僕は幸せな気持ちになれた。
だけど、今日の目的は彼女の声を聞くだけではダメなんだ。
教科書に隠してアプリを起動する。
最低でも1分間は録音しなければならない。
そうしなければ音声変換アプリに採用してもらえないからだ。
朗読は最低でも5分はかかかるはずなので、アプリさえ起動できていれば録音は問題ない。
君島さんの朗読が始まると、先生が教室内を歩き始める。
ちゃんと聞いているのか見回りを始めたのだ。
寝ている者
スマホをいじる者
違うことをしている者
を見つけて叱りつける。
そんなことをされれば、せっかく君島さんの美しい声を録音しているのに先生のダビ声まで録音されてとんでもないことになってしまう。
先生にはバレないようにスマホのアプリを起動して、すぐに机の中へとスマホを隠した。
誰も叱られる者が出るなと祈りながら、ただただ君島さんが読み終わるのを待った。
君島さんの声が響き始め、先生の足音が僕の心臓の音のようにハッキリと聞こえてくる。
一分でいい早く経て!どれだけそれを願ったか……
いつの間にか君島さんは朗読を終えて席に着いていた。
先生も誰も叱ることなく教卓へと戻っていく。
僕はアプリの録音停止を押して、先生の声が入らないようする。
録音はバッチリ出来ていた。
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あとがき
どうも作者のイコです。
第1回「G’sこえけん」音声化短編コンテスト
応募作品です。
あなたの良いねが私を助けてくれます!!!
レビューといいねよろしくお願いします。
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