ライフ・オークション 学園の沙汰も金次第

鏡 大翔

第1話 エピローグ

 橙色の空から光が差し込む。その光は放課後の教室をも橙色に染め上げる。

 

 赤川咲良あかがわさくらは、そんな幻想的な空から自分の正面に座る人物へと視線を移す。

 

 その人物------天蓋翔てんがいかけるは、椅子を黒板の方とは反対方向に向け、後ろの席に座る咲良と向かい合っていた。教室には二人以外誰もいない。咲良には窓の外の景色も相まって、今が世界の終末であるかのように感じられた。

 

 二人は見つめ合い、沈黙していた。互にに何も話さない。

 

 カチカチと時計がうるさい。


 先に話し出したのは咲良だった。沈黙に耐えきれなくなったのだ。

 

 「どうしたの、翔くん? 私に話があるって」


 「………。ああ、お前に話がある。大事な話がある」

 

 間があったものの、翔に会話をする意思はあったようだ。咲良は一安心し、翔に話を続けるよう、目で促す。


 「できればお前とは、このままでいたい。でもどうやらそんな甘ったれたことを言っていられなくなったようだ。だから、はっきりさせようと思う」

 

 えらく抽象的な物言いだったが、咲良には翔がこれから言おうとすることがなんとなくわかった。


 「そのためにまず、お前と俺の今までのことと、これからのことについて話し合いたい」

 咲良は橙色の空へともう一度目を向け、自分と翔との一つの関係の終わりを予感した。

 

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