針が止まる願いを込めて
【すやすや】とは、私とはかけ離れた存在の言葉である。
眠れない夜が怖い。
私は起きているのに、街は静寂に包まれていて。
私を置いてけぼりにしていく世界が怖い。
そして、平等に来る朝に、私は嫌気しかささない、
「また、遅くまで起きてたの?会社遅刻するよ?」
同居人の声。
私は、好きで起きていたわけではない。
怖いのだ。
怖くて寝られないのだ。
何も頑張っていない、何も出来ていない自分なのに、平等に流れる月日。
こんなに、恐ろしいものがあるのだろうか?
世界は私をひとり、置いてけぼりにする。
焦っているとうまく行かず、のんびりしているとサボってると言われる。
私はどうしたらいいのか、ここ数年間ずっと考えていた。
父に言われたことがある、「人が怠けているときこそ、努力を怠るな」と。
本当にそうだと思う。
でも、私はその気力すら、もうないのである。
また、何もしていないのに、朝がやってきてしまう。
お願いだから、ずっと暗闇でいてほしい。
朝なんて、来ないで。
時間、止まって。
私はこれ以上、世界から切断されては生きていけない。
寝たいのだ、寝かせてくれ。
そんな祈りも込めつつ、ベッドに入るがやはりこない眠気。
私は明日のために、寝たいのだ。
こんな、クヨクヨとブルーになってる暇なんてないんだ。
時計を見ると、2時に短針がいた。
はぁ~っと、ため息しか出ない。
寝なかったら、体調がすこぶる悪い。
睡眠不足はいいことがない。
仕事のコスパも悪くなるし、ぼーっとするし、昼間眠たいし。
負のスパイラルをどうにかしなくちゃいけないけど、今の私にはその術がないのだ。
チクタクチクタク
針がなる。
アラームは7時にセットしてある。
5時間も寝られるはずなのに、眠気が来ない。
私は諦めて、居間に行った。
ベッドから起き上がると、寒かった居間。
温かいものでも飲みながら、眠気が来るのを待つ。
眠気を待っていたのに、朝が来てしまった。
雀の鳴き声が、耳を劈く。
あぁ、神様。
私に眠気を下さい。
幸せな夢を見せてください。
チクタクと進む針を見ながら、私は大きなため息をひとつついた。
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