ミラロマ
鵲
フライング
「夕凪って可愛いよな」
級友の言葉にああともはあともつかない曖昧な相槌を返す。
ホームルームを終えた教室はごった返していて、その声は容易に喧騒に紛れた。
夕凪か、級友の言葉に覚え始めたばかりの顔をこっそりと探す。彼女は近くの席の友達と楽しそうに話をしていた。笑った顔が妹みたいだなって思って、似ているところなんて何一つもないじゃないかって頭を振った。当たりの強い妹のあんな無邪気な顔なんて見たことがない。
「……末っ子かな」
「何て?」
級友に困惑したように笑われて、適当に誤魔化して流した。けれどそのイメージは拭えなくて、人懐っこくて誰からも愛されそうだと漠然とした偏見が滲んでしまって決まりが悪い。
アイドルみたいな名前とそれにも負けない愛嬌のある顔立ちで、少し幼くも見えるその言動は他人に安心しきっている人間の距離感に見えた。それが素なのか多少の計算も含まれた小悪魔的なやつなのかは知らないけれど、単純に興味が持てた。いつも楽しそうに笑っている彼女は同じ教室の中にいるのにまるで別の世界の住人のように見えた。
冷えた空気と新たな出会いを纏う春、漠然と分かり合えないんだろうなって思ったことは覚えている。
ミラロマ 鵲 @topplingdoll
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