とある吸血鬼のはなし『気づいたら血を吸われてヴァンパイアになっていた俺のはなし』
水月美都(Mizuki_mito)
プロローグ
ついさっきまで俺は人間だった。
社会人二年目。仕事にやり甲斐も出てきて、ついこの間彼女も出来たばかりだ。
それなのに……。
何の因果か、人ならざるモノになるなんて。
今の時代、皆と違う事をするだけで世間から白い目で見られるのに。
よりにもよって人の生き血が必要な吸血鬼なんて生き物? になるとは。
まさに「マジかよ!」ってなもんだ。
まぁ愚痴っても仕方ない。こいつに“責任”を取ってもらおうか――
「おい、そこにいる時代錯誤な服装をしてるおまえ、お前だよ。無視してんじゃねえ」
普段はこんな言葉遣いなんてしないよ俺は。人生で数えるほどしかないよ本当に。
だって考えてもご覧よ、やっと彼女が出来たのに、もう人間じゃないなんて。脈だって無いし、体温だって生き物の温度じゃないんだ。
死人と何ら変わらない。
くそう……。
「ごめんなさい、ごめんなさい。あまりの空腹に我慢が出来なくて……」
東京のとある繁華街。週末の喧騒が静まりかけた夜明け前。
仕事の付き合いで仕方なく呑みに付き合った帰り道。
まさか映画で見たことある吸血鬼の、ドラキュラ伯爵の扮装した奴に噛まれるとか思ってもいなかったよ。
おまけに妙にオドオドしてるしこいつ。
でも空腹は辛いよな。いや、そんな言葉に
「いくらお腹空いてたって、断りなしに勝手に血を吸われたら困るんだよね。それにあんた、俺が死にそうになったら慌てて自分の血を飲ませたよな。おかげでどんな化学変化を起こしたのか知らないが、俺まで化け物になってしまっただろ? どう責任取るつもりなんだ?」
「どっ、どっ、どう責任とは? わっ、わたしもどんな仕組みで変わるのかサッパリ分からないのです。そ、それに……」
「……それに?」
「そろそろ夜が明けます。日光に当たると我々は灰になってしまいます。出来れば
遮光カーテンだと? それも身体に巻いて
「柩なんて普通葬式をする時ぐらいしか用意しないだろ。家庭に常備してたら怖いわ!」
いかん。薄っすらだが日が登る兆候が出てきた。こんな奴とこんな所で漫才してる暇は無い!
「俺の家はここから徒歩10分だ。柩は無いが、遮光カーテンならある。急いで行くぞ!」
こうして、キョドり吸血鬼と新米吸血鬼の俺は、ワンルームマンションまで急いで帰るのであった。
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