手のひらひとつぶんにたりない

音崎 琳

手のひらひとつぶんにたりない

約束もなき足音に耳澄ますお弁当箱のすみ秋麗



ぽけっとのなか おいしくてつよくなる 手のひらひとつぶんの優しさ



いつの間に賞味期限が切れていた下書きを削除できないでいる



空気にも匂いがあったことなどを忘れつつありカレンダーめくる



まだこれじゃ強度がたりないとけるからつめたくかたくラッピングして



眠りこける母の口からてくてくと昨晩の母一昨日の母



何でもいい、この夜から逃げられるなら溺れるために目も喉も塞ぎ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手のひらひとつぶんにたりない 音崎 琳 @otosakilin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説